3PLとは?倉庫業との違いなど分かりやすく解説!
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3PLとは3rd Party Logistics(サードパーティーロジスティクス)の略で、出荷人ではない事業者が、荷主に代わって行う物流業務のことです。読み方は「スリーピーエル」とも「さんピーエル」とも読みます。
この記事では3PLの定義をわかりやすく説明していきます。メリット・デメリットや、登場した背景なども紹介しますので、この機会にぜひ3PLの概要を理解しましょう。。
3PLの定義-倉庫業などとの違い
3rd Party Logisticsを直訳すると「第三者物流」です。
「第三者」とは荷物を送る企業でも受け取る企業でもない、本来は荷物に関係の無い企業のことを指します。また「物流」とは、荷物の輸送から倉庫での保管、包装・加工作業、トラックへの積み込み・積み下ろし等、荷物の移動に関する業務をまとめた呼び方です。
ここまでの説明ですと「3PLは荷主の物流業務を代行することかな?」と思われると思いますが、実は3PLに一番大切な要素が抜けています。
国土交通省によると3PLを以下のように説明しています。
3PL(third party logistics)とは荷主企業に代わって、最も効率的な物流戦略の企画立案や物流システムの構築の提案を行い、かつ、それを包括的に受託し、実行することをいいます。
(引用元:https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/butsuryu03340.html)
国土交通省の説明で一番重要な点は、3PLは最も効率的な物流戦略・システムを企画し、提案し、実行するということです。企業の物流戦略が効率化するように物流業務全体をマネジメントし、総合的に支援する役割を担っているのです。
よって荷物の保管業務(倉庫業)や輸送業務(運送業)など、個々の業務を手掛けるだけでは3PLとはいえません。企業物流の課題解決に向けてコンサルティングしてこそ3PLといえます。
< 3PLを手掛ける企業の種類-アセット型とノンアセット型 >
3PLのサービスを提供する企業には、「○○倉庫」や「○○運輸」、「○○システム」といった会社名が多数存在します。もともとは物流における一部の業務(保管、輸送、情報管理など)を担っていた企業が手掛ける物流業務の範囲を広げていった結果、3PL事業者になったと考えられます。
企業の前身が物流関係であれば、倉庫や物流拠点、トラック等の資産(アセット)を保有しているでしょう。自前の資産を活用している3PL事業者をアセット型と呼びます。
一方で自社では物流に必要な資産を持たず、コンサルティングに特化している3PL事業者もいます(ノンアセット型)。荷主企業と倉庫業者・運送業者の間に立ち、物流効率化に向けた体制づくりやオペレーション設計などを担っています。
3PLを利用するメリットとデメリット
荷主企業の視点で、3PLを利用することにはどんな効果があるかを見ていきます。
< メリット >
3PLはクライアントのロジスティクスを包括的に支援するのが特徴です。そのため、3PL事業者に委託することによって次のような効果を期待できます。
① 物流コストの最適化
効率化のプロである3PL事業者がオペレーションのムダを調査し、改善に向けた施策を実行することで物流コストの最適化が実現できます。自社内には無いノウハウを取り入れられることは、外部に委託する大きなメリットです。
またメーカーにとって、物流はサプライチェーン上のコストと捉えられてしまうのが現実です。そのため、自社で物流を内製化している場合は「いかにコスト(費用、人員など)を減らすか」に注力しがちです。3PL事業者に委託すれば、品質維持も考慮したうえで必要なコストを適切に見積もってもらうことができます。
加えて実績豊富な3PL事業者と組めば、モーダルシフトや共同配送など他の企業と提携する必要のある取り組みも実施しやすいかもしれません。会社単位だけでなく、社会という単位での物流の最適化を推し進めることができます。
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② ロジスティクスに関するリソース不足の解消
物流部門を内製化する場合、業務に必要なインフラやスタッフを自前で手配しなければいけません。3PLを活用すれば、人材や倉庫、トラックや在庫管理システムなどの調達も支援してもらうことができます。
③ 経営リソースの効率化
3つ目のメリットは、商品開発や営業など企業にとっての「本業」に社内のリソースを割くことができるようになることです。物流業務はプロに任せて、営業拡大や新規事業の立ち上げにリソースを回すことができれば、企業の強みをさらに発揮していけるでしょう。
< デメリット >
3PLを利用するうえでの懸念点を一つ挙げるとすると、パートナーシップの構築の問題があります。
少し古いデータですが、2007年に国土交通省が発表した「3PL事業促進のための環境整備に関する調査」によると、3PL事業の課題として「荷主企業から十分な情報公開がされていない」、「荷主企業の物流戦略が明確にされていない」といったことが挙げられています。
これはいわば、企業間の連携に関する課題だといえます。業務を効率化するにはその企業の課題を明らかにする必要がありますが、依頼する企業と請け負う企業との間でコミュニケーションがうまく取れていなければ、効果的な改善策は出てきません。
これは3PLに限ったことではなく、あらゆる企業間の取引にいえることです。例えば不動産ディベロッパーと建設会社、EC小売業者とスマートフォンアプリ制作会社などの取引でも、何か業務を委託する際に発注側と受注側の認識齟齬でトラブルになることはしばしばあるものです。
3PLをアウトソーシングする場合でも、荷主企業と3PL事業者のミスコミュニケーションには注意しなければなりません。荷主企業はできるだけ具体的に目的やビジョンを言語化し、3PL事業者に共有することが大切です。
3PLが広まる背景
3PLという言葉が登場するようになったのは1990年代に入ってからといわれていますが、それまでの物流は自社が管理することを前提としていました。
例えば食品メーカーであれば工場で生産した商品は、保管や輸送まで自社で管理するものでした。しかし先に説明した通り物流管理には様々な投資が必要になります。
食品メーカーであれば商品を生産することがもっとも価値を生み出せる部分です。物流業務は商品を売るために仕方なく発生するコストであり、どうすれば削減できるのか、物流効率化に対する専門家の知見が求められていました。
そこで物流改善に関するノウハウを蓄積し、様々な企業に対して改善策を提案できるコンサルティング企業の需要が高まった結果、現在のような3PL事業者に自社の物流をアウトソーシングする流れが定着したのでしょう。
まとめ
3PLとは単に物流に関する業務を指すのではなく、荷主企業の物流業務全体を見直し、改善・運用を行うことであると分かりました。
荷主企業は3PLをうまく活用することで、コストの最適化やリソース不足の解消、経営の効率化といったメリットを受けられます。ただし、効果的な改善策を得るためには企業と3PL事業者の間で綿密なコミュニケーションが必要です。