サプライチェーンとは-用語の意味やサプライチェーンマネジメントについて紹介
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食品メーカーがサプライチェーンの構造改革を開始...大手コンビニが新たなサプライチェーン管理システムの導入を決定...など、ニュースや新聞でよく耳にする用語に「サプライチェーン」があります。しかしその意味を聞かれると、言葉に詰まる人も多いのではないでしょうか。
この記事ではサプライチェーンとは何か、サプライチェーンマネジメントと合わせて説明していきます。
サプライチェーンとは
サプライチェーンとは、1980年代にアメリカで論じられ始めた経営用語です。商品が生産されてから消費されるまでの一連の経済活動(調達・生産・物流・販売・消費など)をまとめて表します。
サプライチェーンを日本語訳すると「サプライ=供給」と「チェーン=連鎖」ですが、ここでいう供給先とは消費者のことです。連鎖とは調達から消費までの流れが鎖のように連なっていることを意味しています。
< サプライチェーンの具体例 >
サプライチェーンと一言で言っても、業種や業態によって様々な流れがあります。
いくつか例を挙げてみましょう。
例えば家電の場合、まず金属、プラスチック、ガラスなどの原材料を調達します。その後メーカー工場で製造し、メーカーや委託先の物流センターに輸送されます。更に家電量販店の物流センターなどを経由して店舗に届けられ、消費者が購入します。
消費者がECで購入することも多いですが、その場合は店舗ではなくEC専用倉庫などに保管され、注文後発送し消費者に届けられます。
青果物の場合はどうでしょうか。個人農家などの生産者はまずJA(農業協同組合)の拠点に青果を持ち込みます。次に卸売市場に輸送され、業者との取引が行われます。取引後は、小売業者や外食業者であれば倉庫・スーパー・飲食店などへ輸送され、消費者に提供されます。加工業者であれば工場での加工作業後、卸売業者を通して小売業者や外食業者、最終的に消費者に届けられます。
近年は、ECを活用することでJAや市場を介さずに生産者から消費者へ直接販売するケースも増えてきています。
以上の通り、簡単に説明しただけでも、サプライチェーンの形は多種多様であることがわかります。自社のサプライチェーンは勿論ですが、他業種ではどのようになっているのかを調べてみるのも面白いかと思います。
< サプライチェーンにおける情報の流れ >
IT技術が発達した現代では、供給したい「モノ」がどのくらい売れるのか、需要を予測したうえで供給するのが一般的でしょう。需要予測には、いつどこで売れたのか、誰が何の目的で買ったのかといった販売実績の「情報」が不可欠です。この情報の流れはモノの流れとは反対に、消費者から供給元へ渡されます。
その内容をもとに次の原材料の調達や製造、輸送を決定していくことになります。
サプライチェーンマネジメントとは
サプライチェーンにはモノの流れと情報の流れが存在し、現代では消費者から得た情報をもとに供給計画を立てると説明しました。この2つの流れの管理や、情報の高度化・供給の最適化を実施していくことをサプライチェーンマネジメントといいます。
略称でSCMとも呼ばれます。
< 物流やロジスティクスとの違い >
サプライチェーンマネジメントの他に「物流」「ロジスティクス」という用語があります。どちらもモノの流れや情報の流れに関わる用語ですが、定義は違います。
用語 | 定義 |
---|---|
物流 | 商品が消費者に届くまでの過程をまとめて表したものです。 過程は「輸送」「保管」「荷役」「包装」「流通加工」の五大機能で構成されています。※ 近年は「情報管理」も物流機能として説明されることが多いです。 |
ロジスティクス | 「物流管理」という意味の用語です。物流の各機能の管理・効率化やトータルでのコスト削減を図ります。基本的に一企業の社内物流に対してのみ使います。 |
サプライチェーン マネジメント |
特定企業の社内物流だけでなく、サプライチェーンに関わる複数の企業が協力し合って、コストの全体最適化を図る際に使います。 |
※物流の各機能についての詳細は以下のコラムで紹介しています。
>出荷とは|物流業界における定義、発送や配送との意味の違い
ロジスティクスは一企業内の物流管理に対して使い、サプライチェーンマネジメントは複数企業間で供給の流れを管理するときに使います。
< サプライチェーンマネジメント導入によるメリット >
サプライチェーンマネジメントにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
①在庫の適正管理
消費者の購買情報と倉庫の在庫状況をタイムリーに連携することで、需要が発生した際に機会損失することなく商品を出荷することができます。
また、多数の購買情報を集約して需要の増減予測ができれば、例として需要減少時には原材料の調達時点での抑制が可能となり、過剰在庫を防ぐことが出来ます。
②リードタイムの短縮
「リードタイム」とは物事に着手してから完了するまでの時間のことです。サプライチェーンで言えば、原材料の調達から消費者に販売されるまでの総合した時間を指します。
サプライチェーン全体で供給プロセスを最適化することで、非効率的な業務フローや情報連携を解消することができ、リードタイムの短縮が可能になります。
勿論サプライチェーンマネジメントを導入するには、情報を一元管理するためのシステム開発や、会社間での交渉など多くのタスクが存在します。しかし実現した際のメリットは大きく、今後も多くの企業で取り組みが進められていくでしょう。
まとめ
サプライチェーンとは企業の垣根を超えた製品と情報の一連の流れを表し、その管理・最適化を図っていくことをサプライチェーンマネジメントと言います。
業種業態によって様々な形式がありますが、自社以外のサプライチェーンを知ることも、新しいアイディアの発掘に役立つかもしれません。