検品レスとは?メリットや取り組み事例、実現のための課題を紹介
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皆さん「検品レス」と聞いてどんな意味を思い浮かべますか?物流担当者であればご存知かもしれませんが、まだまだ一般的ではない用語です。
この記事では検品レスとは何かを説明したうえで、メリットや取り組み事例、実現に向けた課題などを紹介します。比較的簡単に始められる取り組みも載せておりますので、是非参考にしてみてください。
検品レスとは?
検品レスとは一言で表すと「入荷時の検品作業を省略・簡略化すること」です。
検品は出荷のタイミングと入荷のタイミングでそれぞれ実施することが一般的ですが、検品レスでは入荷時に一つずつ検品することなく入庫を完了します。そのため、出荷時の検品が正確であることと、輸送中に荷物の破損などが起きないことが実施の前提条件となります。
ちなみに、検品には「検数(数が発注通りか検査する事)」と「検質(品質が発注通りか検査する事)」の2種類がありますが、検品レスではどちらも省略が可能です。そもそも検品作業とはどのようなものか、効率化に向けた取り組みについて興味のある方は参考記事も是非お読みください。
メリットと取り組み事例
実施するメリットについて本記事では3つ挙げたいと思います。
①SCM(サプライチェーンマネジメント)の効率化
サプライチェーンとは商品が生産されてから消費されるまでの一連の経済活動(調達・生産・物流・販売・消費など)を指します。
SCM(サプライチェーンマネジメント)とは、この活動全体をまとめて管理し、在庫適正化やリードタイムの短縮を実現することです。検品レスを実施することで、各経由地点での入荷検品に関わる作業時間を削減することができ、結果的にサプライチェーン全体で見た時のリードタイムの短縮が可能となります。
特に中継する倉庫や業者が多い、複雑なサプライチェーンであればあるほど、検品レスの効果を発揮できるでしょう。
なお、検品レスとSCMは非常に親和性の高い取り組みです。
通常出荷する側の企業と入荷する側の企業が異なれば、それぞれの企業で商品情報の管理方法も異なるため、各企業が検品作業を行う必要があります。しかしSCMにより企業の垣根を超えて情報管理を一元化することで、入荷側も出荷時の商品情報をそのまま活用することができます。よって、検品レスはSCMを導入している企業にとって比較的実施しやすい取り組みと言えるのではないでしょうか。
②ドライバーの負担の削減
入荷検品がある場合、配送したドライバーは荷物の積み降ろし後、検品完了まで待機しなければいけません。荷物の種類や量が少なければ短時間で済むかもしれませんが、種類や量が多ければ、相応の待機時間が発生します。また、検品作業時間が予定よりかかってしまい、他のトラックの接車時間が伸びてしまうこともあります。
検品レスの実施により入荷作業をスムーズに終えることができれば、これらのドライバー待機時間の負担を削減することができます。近年政府主導で取り組んでいる「ホワイト物流」でもドライバーの労働環境の改善は重要視されており、検品レスもホワイト物流を目指す上で効果的でしょう。
参考:ホワイト物流とは|推進運動の賛同メリットや取り組み事例を紹介
③入荷側の作業負担の削減
検品作業には様々なコストがかかります。従来通り作業者がチェックしていく場合、人手も必要ですし数え間違いや破損状態の見逃しなど、人的ミスをゼロにすることはほぼ不可能です。
一方で検品用のシステムや機械を整備するには、開発費も開発期間も確保しなければなりません。また、システムを導入しても想定通りの運用ができず、かえって作業が複雑化してしまう可能性も否定できません。
検品レスを実施すればこれらの課題をまとめて解決することになります。特に昨今の物流業界における高齢化や人手不足から、倉庫の作業員確保が難しいことも多く、検品レスによる検品負担の削減は作業員の望む取り組みの一つと言えます。
< 取り組み事例 >
次に、検品レスを導入している企業や業界について見ていきたいと思います。
ASNの活用(キユーピー株式会社)
ASN(Advanced Shipping Notice)とは事前出荷情報のことで、商品番号や個数、到着予定日、食品の場合は賞味期限等が含まれます。出荷時に情報を配信することで、入荷側では商品の到着前に在庫の引き当てが可能になります。
また、ASNはパレットごとに紐づけられることが多いですが、入庫の際にはASNを読み取るだけでパレットごとの荷物詳細が確認でき、検品レスが実現します。
キユーピー株式会社ではこのASNを活用し、パレットへの紐づけ及び卸先企業への配信による検品レスに取り組みました。結果として荷受及び事務作業、待機車両の低減効果や、トラックの接車時間及び待機時間の削減効果がありました。
小売業における流通BMSの普及
前述のキユーピー株式会社の例でも説明した通り、検品レスを目指すためには出荷側と入荷側での情報連携が非常に重要ですが、連携するためのメッセージフォーマットや管理方法は各社ごとに異なります。そのため情報連携のためのシステムを開発しようとしても、取引先ごとに用意することとなり、とても開発費用が間に合いません。
そこで流通業界では、システムを標準化するため「流通BMS(流通ビジネスメッセージ標準)」を取りまとめました。前述の通り、メッセージフォーマットを共通化することや、通信インフラを統一するといった内容になっています。
この取り決めにより、メーカーと小売業者のスムーズな情報連携を可能とし、検品レスにも取り組むことができるようになりました。
RFIDタグの活用(株式会社ファーストリテイリング)
RFID(radio frequency identifier)タグとは、近距離の無線通信により埋め込まれたデータを読み取ることができるタグです。
株式会社ファーストリテイリングでは、ユニクロやジーユー等の自社商品に対しこのRFIDタグを値札部分に付与しました。商品の色柄や大きさ、素材、製造時期など様々な情報をタグに埋め込んでおり、入荷時の検品レスは勿論の事、在庫管理や棚卸、店舗での販売の効率化まで実現しています。
実現に向けた課題
検品レスには魅力的なメリットがある反面、いざ実現を目指すとなると、複数の課題も存在します。
高精度ASNの担保
出荷側から送られてくるASNに間違いがあっては、入荷側は安心して検品作業を省略できません。精度を高めるためには人的ミスを防ぐためのダブルチェックや、ピッキング自動化などコストもかかります。
データ連携方法の統一
企業間のデータ連携に関する取り組み事例として、小売業における流通BMSを紹介しましたが、多くの業界・企業では統一フォーマットというのはまだ普及していません。
よって、検品レスを検討する際は取引企業とフォーマットから検討する必要があります。さらにシステム開発についても企業間でのすり合わせが必要です。
事業者間の信頼関係
入荷側が後から理論在庫と実在庫の差に気付いた場合や、商品の破損を見つけた場合について、両社が納得できる取り決めが必要です。また引き続き改善・継続を目指す信頼関係が必要になります。
輸送品質の確保
検品レスの大前提として、輸送中の荷物事故を起こさないことが重要です。いくら出荷時に万全の検品をしても、輸送中に破損してしまっては意味がありません。
先ずは輸送品質の向上に取り組むのがおすすめ
簡単に説明しただけでも、検品レスの実現には決して低いとは言えないハードルが存在することがわかりました。システム開発にも企業間の交渉にもコストがかかります。
そこで、先ずは輸送品質の向上に取り組むのはいかがでしょうか。
< 安心安全な輸送を実現するJITBOXチャーター便 >
JITBOXチャーター便とは、幅104cm×奥行き104cm×高さ170cm(内寸)の鉄製のボックスに最大500kgまでお荷物を積載いただき、全国輸送が可能なサービスです。
安心安全な輸送を提供できる理由は以下の通りです。
- 鉄かごのため荷物を外部の衝撃から守ることができます。
- 集荷後はボックスのまま配達先にお届けするため、荷物の積み替えによる口割れや紛失を防ぐことができます。
- 荷物を覆うビニール製のカバーオプションもあり、直射日光やホコリから荷物を守ります。※有料オプションです。
出荷時のピッキングミス・検品の効率化にも取り組みつつ、JITBOXチャーター便の活用で検品レスに向けた第一歩を踏み出しましょう!