物流業界における2024年問題とは?業界が抱える課題と対策についてわかりやすく解説

専門用語物流管理課題・改善

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2019年から働き方改革関連法が徐々に施行されているなかで、「2024年問題」と呼ばれる物流業界における労働環境の変化が問題視されています。

この「2024年問題」は、物流業界だけでなく、小売業などさまざまな業界に影響を与える可能性があるため、業界を超えて大きな注目が集まっているのです。

この記事では、2024年問題の内容や課題、改善策について詳しく解説します。2024年問題とこれからの物流業界について、ぜひ考えてみてください。

物流業界における2024年問題とは?業界が抱える課題と対策についてわかりやすく解説

物流業界における2024年問題について簡単にわかりやすく

物流業界における2024年問題について簡単にわかりやすく

2024年問題とは、働き方改革において自動車運転の業務の時間外労働時間が、年960時間(罰則付き)に上限規制されることで発生する問題のことです。

2024年問題に入る前に、まずは働き方改革について簡単に説明します。

この改革では働き方の改善や魅力的な職場づくりを目指しており、2018年6月に働き方改革関連法が成立しました。2019年4月からは全産業を対象に労働関係法令が段階的に施行されています。

この労働関係法令では、「時間外労働の上限規制」や「有給休暇の取得義務付け」、「同一労働・同一賃金」などが定められています。

自動車運転業務についてもすでに一部は適用されていますが、時間外労働の上限規制については猶予期間が設けられており、施行が2024年4月となっています。

この時間外労働の上限規制が2024年問題にかかわっています。

自動車運転業務における時間外労働の上限規制について

時間外労働の上限規制の内容を簡単に図に表してみました。

自動車運転業務における時間外労働の上限規制について

今回の改正で、法定労働時間を超え時間外労働をする場合、労働基準法第36条に基づく労使協定、いわゆる36(サブロク)協定の締結と、所轄の労働基準監督署長への届出が必要になりました。

そのうえで原則の残業時間を月45時間、年360時間と定めています。

ただし、自動車運送業務では特別条項として年960時間まで残業可能です。全業種の上限規制よりも240時間も長く労働できることになります。
法定労働時間と原則の時間外労働時間に加え、更にその他の業種より上乗せした時間外労働時間が適用される状態で、規制を超える企業はどれくらいあるのでしょうか。

なぜ物流・トラック運送業者で2024年問題が課題になっているのか

なぜ物流・トラック運送業者で2024年問題が課題になっているのか

残業の削減は企業にとってもコスト削減になるという意識から、近年は残業しないよう取り組む話を聞くことが増えています。そのような状況下で、最大年960時間の残業時間は十分な長さにも感じます。

厚生労働省が2021年3月に発表した自動車運転者の労働時間等の実態調査によると、2019年の通常期および繁忙期における1日の時間外労働時間別の割合(回答事業者数:257人)は以下のとおりでした。

トラック(n=257) 通常期 繁忙期
時間外労働なし 20.8% 17.7%
1時間未満 12.7% 10.3%
1時間~4時間未満 48.1% 47.6%
4時間~7時間未満 14.0% 18.8%
7時間超 4.3% 5.6%

参考:自動車運転者の労働時間等に係る実態調査事業(厚生労働省)

通常期・繁忙期ともに、過半数以上が4時間未満の残業に収まっていることがわかります。
こう見ると4時間以上の回答部分が、上限規制に引っかかりそうだと感じるのではないでしょうか。

たしかに通常期でも4時間以上が平均の場合は、上限規制を超えてしまいます。
つまり全体の20%弱は、このままでは上限規制を超える可能性が高い状態にあるのです。

しかしさらに恐ろしいことに、計算してみると実は1時間~4時間未満の回答のなかにも上限規制を超える可能性のある事業者が含まれています。

仮に1ヵ月間の稼働日を22日(30日間-休日8日)、上限残業時間を80時間(12ヵ月/960時間)とした場合、1日に残業できる時間は約3.7時間、つまり4時間以下になるのです。

1時間~4時間未満の回答者のうち、どの程度が3.7時間を超えるかはわかりませんが、ボリュームゾーンのなかにも今回の規制にかかわる企業が含まれていることは意識しておいたほうがよいでしょう。

< 長時間労働の問題(働き方改革) >

物流業界では、働き方改革が進んでいるにもかかわらず、トラックドライバーの長時間労働が問題となっています。

働き方改革関連法による労働時間の上限規制は、常態化している長時間労働を解消し、ドライバーの労働環境を守るための規制ともいえるのです。

国土交通省が提供をしている「令和3年度交通の動向」によると、国内物流のうちトラックによる輸送量は減少傾向にあり、労働時間の上限規制が加わることでドライバーの長時間労働は解消されやすくなるでしょう。

一方で、BtoBの商取引では貨物出荷の小口化によって輸送量の増加傾向が見られ、現在よりも多くのトラック輸送が必要になることが予想されています。

さらに、ドライバーの労働時間規制は1ヵ月単位で制限されていません。
年間上限では問題ないものの、短期間では現在よりも過酷な長時間労働が発生する可能性があるのです。

したがって、単純な労働時間の規制だけでは、長時間労働の改善に貢献しないことが2024年問題の課題とされています。

< ドライバーへの賃金支払いの問題 >

トラックドライバーの賃金は、一般的に労働時間に比例して上がります。

働き方改革関連法の施行によって労働時間に上限が設けられると、年間の労働時間が減少するため、その分ドライバーの収入も減少する可能性があるのです。

さらに、ドライバーが稼げない職業となると、ドライバーを目指す人が減り、異なる職種へ転職するドライバーが増えるため、物流業界から人材が流出します。

その結果、現役ドライバーの仕事量が増え、隠れ残業などの悪質な職場環境が発生するかもしれません。

< 企業の売上の低下 >

物流事業は、運送した荷物の量によって利益が決まるため、ドライバーの労働時間が企業の売上に直結する傾向があります。

そのため、労働時間の上限規制が設けられると企業の売上が低下し、事業の継続が困難になる可能性も出てくるのです。

< 消費者への負担増加 >

ドライバーの労働時間が減少し、売上が低下することを防ぐためには、運送料の値上げが必要です。

運送料の上昇は商品価格に影響し、生活必需品も今までと同じ価格で購入することができなくなる可能性があります。
その結果、消費者の負担が増加し、家計が圧迫されるリスクもあるのです。

時間外労働には罰則が付与される可能性がある

時間外労働には罰則が付与される可能性がある

今回の改正によって法律上、時間外労働の上限は原則として⽉45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情(※1)がなければこれを超えることができなくなります。

なお、特別の事情がある場合でも守らなければならない基準(※2)があります。

(※1)臨時的に必要がある場合の例
・予算、決算業務 、業務の繁忙 、納期のひっ迫、大規模なクレーム対応等。

(※2)守らなければならない基準
・月45時間を超えることができるのは、年6ヵ月まで。
・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満で、2~6ヵ月平均がすべて80時間以内。

さらに臨時的な特別の事情の有無にかかわらず、時間外労働と休日労働の合計は一年を通して常に月100時間未満、2~6ヵ月平均80時間以内にしなければなりません。

これらの上限を超えた場合、罰則(6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されるおそれがあります。

2024年問題に向けて物流業界が向き合うべき課題

2024年問題に向けて物流業界が向き合うべき課題

2024年問題では、ドライバー一人あたりの輸送量が減ることによって、賃金や売上の低下、消費者の負担増加などを招くことが懸念されています。

そこで、事業者が2024年問題の改善に向けて向き合うべき課題を、4つの視点から解説します。

< ドライバーの増加 >

現状でも長時間労働などによりドライバー不足が問題となっており、2024年問題を迎えることで、さらに人材不足は深刻な問題となるでしょう。

一方で、物流業界の仕事量は今後増加すると予想されており、ドライバー一人あたりの仕事量が増加することで、想定以上にドライバーが不足するかもしれません。

そのため、労働条件や労働環境の見直しによる在籍ドライバーの定着、新しい人材の確保を積極的に行ない、ドライバーの増加に努める必要があります。

< IoTをはじめとする効率化 >

ドライバーの増加は必要ですが、在籍するドライバーが増えると企業の負担も増え、利益増加につながらないことがあります。

ドライバーの数を確保するとともに、利益向上を目指すには、IoTなどのデジタル技術を活用した業務効率化に取り組み、ドライバー一人あたりの生産量を向上させることが重要です。

例えば、集荷の待機時間など不要な拘束時間を削減し、ドライバーの業務時間を輸送に最大限活用するようにしましょう。

また、効率的な配送体制の実現には、集荷先や配達先の企業との連携も必要です。
空車率を下げるためのルート変更、運賃や料金プランの見直しなど、顧客企業と丁寧に交渉し最適な配送体制を実現することも求められます。

< 適切な勤怠管理 >

ドライバーの労働時間が法律で定められた時間を超えると、企業に罰則が科される可能性があります。

法律を遵守して営業していることを証明するためには、ドライバーの正確な退勤管理が必要です。
そのため、法改正前に退勤管理体制を見直し、ドライバーの就業時間を正確に管理するようにしてください。

< 輸送形態の改善 >

ドライバーの長時間労働を解消し、効率的な輸送を実現するために、輸送形態の改善が求められます。

例えば、長距離輸送を一人で担当するのではなく、複数人による短距離輸送をつなぐことで時間効率を上げる対策などが有効です。

輸送形態の改善により、ドライバーに負担をかけず、長く働きやすい労働環境を実現しましょう。

以下の記事でも紹介していますので、参考までにご覧ください。
参考:物流効率化の動向|業界課題や政府の方針をふまえた取り組みと事例

< パレット(輸送用機器)の活用 >

荷役(荷物の積み降ろし)が手作業になっている場合は、パレットの活用を検討してみるのもよいでしょう。

荷物を一つ一つ手で積み込み、降ろすより、パレットでまとめて作業した方がドライバーの作業負荷も小さく作業時間も短縮できます。

ただし実施するには、パレットを購入・管理するためのコストや、集荷先・配達先にパレットの保管場所、パレットを移動させるためのフォークリフトの準備が必要です。

参考:パレット輸送の基礎知識|種類と特徴の解説

< 物流業界の課題解決は荷主企業の協力がカギ >

物流業界の課題解決への対策案として「ドライバーの増加」「IoTの活用」「適切な勤怠管理」「輸送ルートの見直し」「パレットの活用」を挙げました。

その他にも国土交通省、厚生労働省、公益社団法人全日本トラック協会が資料を配布しているため、ご確認いただけると参考になるかと思います。

国土交通省サイト:荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン
全日本トラック協会サイト:2024年問題(働き方改革)特設ページ

働き方改革の実現に向けた案には、運送業者だけでなく、荷主企業も取り組まなければならないケースが多くあります。

輸送効率を向上させドライバーの労働環境を改善するためには、集荷先・配達先の企業でも物流条件の調整やシステムの整備依頼、コストの見直しに協力いただく必要があるでしょう。
運送業者も荷主企業も物流の全体最適化を視野に入れながら、双方で積極的なコミュニケーションを取っていくことが大切と言えます。

まとめ

2024年から全面施行される働き方改革関連法は、ドライバーの長時間労働の改善を目的とした、ドライバーを守るための法案です。しかし、多くのドライバーは長時間労働によって高額な賃金を得ており、労働時間の抑制により賃金が低下する可能性があります。

また、ドライバーの賃金低下によりドライバーが減少する一方で、輸送される荷物の量は増加傾向にあり、現在のような迅速な集荷・配達ができなくなるかもしれません。

このように、働き方改革関連法の施行にともなう2024年問題は、物流業界だけでなく小売業や消費者など多くの人々に影響を与えてしまうでしょう。

施行後の物流環境へ迅速に対応するためにも、今から2024年問題への対策を始めることが大切です。

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