コールドチェーンとは｜用語の意味や重要性、メリット・デメリットを詳しく紹介

更新日: 2022.05.31

近年『コールドチェーン』への注目が集まっています。皆さんもどこかで見聞きしたことがあるのではないでしょうか。コールドチェーンは、新型コロナウイルスのワクチンや、巣ごもり需要によって消費が拡大している生鮮食品、弁当や総菜などの流通に関わっています。どれも今の私たちの生活に大きく関わっていることに気付くはずです。この記事ではコールドチェーンとは何か、重要性やメリット、デメリットもあわせて説明していきます。

コールドチェーンとは

コールドチェーンとは、低温（一定の温度）を保持した状態で、生産から消費までの一連の流れを行うものです。生産・加工・物流・販売・消費の流れと聞くと、似たような言葉でサプライチェーン（サプライ＝供給　チェーン＝連鎖）が連想されます。サプライチェーンでは、温度管理は必要ありませんが、「コールドチェーン」では、厳密かつ適切な温度管理が求められます。
※サプライチェーンについての詳細は以下のコラムで紹介しています。
＞サプライチェーンとは｜用語の意味やサプライチェーンマネジメントについて紹介

コールドチェーンの活躍の場としては、温度管理が必要な食品物流や医薬品物流などが挙げられます。「低温物流」や「低温ロジスティックス」、「生鮮サプライチェーンマネジメント」もコールドチェーンと同様の仕組みです。
例えば、セブンイレブンではサンドイッチ等のフレッシュフードを扱っていますが、そこに使用されている野菜はコールドチェーンによって運ばれています。レタスも収穫後に鮮度を保って加工された後、低温保管され、工場から店舗まで低温状態で輸送されます。これによりレタスへのダメージが最小限に抑えられ、あの美味しいシャキシャキ触感が維持されているのです。
＞参考：セブンイレブン「レタスが「シャキシャキ」の理由」

ワクチンの流通では、製薬メーカーの出荷から患者に投与されるまで、厳しい条件での温度管理が求められます。そのため高い品質を保つことができるコールドチェーンで輸送されています。

コールドチェーンの重要性

冷蔵・冷凍が必要な低温の製品は温度変化で劣化しやすく、一定の温度を維持できなければ求められている品質を保つことができません。品質の観点からコールドチェーンがいかに重要であるか、お分かりいただけると思います。
では、物流業界における重要性はどうでしょうか。コールドチェーンの登場は物流に大きな影響を与え、その発展に貢献しました。例えば、コールドチェーンの市場規模を見てみましょう。一般社団法人　日本冷凍食品協会の調査によると、冷凍食品の国内生産額は年々拡大しています。令和3年（1～12月）の日本の冷凍食品国内生産は、数量が1,596,214トン（対前年比102.9％）、金額（工場出荷額）も7,371億円（対前年比105.2％）であり、共に前年を上回りました。
ここで改めて、コールドチェーンが物流に与えた影響をまとめてみましょう。

① 品質管理が正確にされた新鮮な商品をお届けできる
常温輸送と比較すると、製品の品質が劣化しにくいため、食品などが新鮮な状態でそのままお届けができるようになりました。味や風味が損なわれることなく、あの美味しい状態を保持したまま、生産地の味を消費地で味わえるようになったということは、消費者にとっても大きな変化であると言えます。

② 輸送エリアの飛躍的な拡大
常温輸送が主だった時代は、長時間の輸送で品質が落ちてしまうため、販売や輸送エリアが限定され、遠方へ配送する事は難しい状況でした。しかし、コールドチェーンにより、長時間品質を保つことが可能になり、輸送エリアを拡大することができたと言えます。今まで食べられなかった食品や、遠隔地・国外で生産された生鮮食品を市場に出すことができるようになりました。

③ 廃棄ロスの削減
コールドチェーンの発展は「廃棄ロス」削減にも貢献しています。適切な温度管理により供給段階で商品が傷むリスクが減ったことで、無駄なコストをカットでき、物流の効率が向上したと言えるでしょう。
また「廃棄ロス」はSDGsの目標にも掲げられているため、これから意欲的に取り組むべき課題でもあり、コールドチェーンの更なる発展が解決に貢献するかもしれません。

コールドチェーンのメリット、デメリット

コールドチェーンを利用することで、事業者にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。

メリット	デメリット	課題
市場は好調で社会にも貢献・市場規模が年々拡大・販路の拡大・商品や製品の廃棄ロス削減	費用と管理のコストが高い・多くの費用が必要・管理項目の増加	様々なリソース不足・都市部・地方部を問わず、冷蔵・冷凍庫の不足・羽田空港や東京港周辺の物流施設不足・国内輸送リソース（人材・トラック等）の不足

＞参考：農林水産省,GFP輸出商社部会「コールドチェーン確保に関わる勉強会」報告書

先にご紹介した通り、コールドチェーンには様々なメリットがあります。その一方でデメリットとして、コールドチェーンを行うための「設備投資費用」や、導入後に発生する「維持費用」が相応にかかってしまいます。更に原材料の調達から消費者への供給まで厳密な温度管理が求められ、責任も重大です。また今後の課題として、リソース不足への対応も必要とされています。
このようにデメリットや課題は多数ありますが、その上でもコールドチェーンは販路拡大、コストカット、社会的意義など多くのメリットが見込めるため、取り組んでいく価値のある領域だと言えるでしょう。

コールドチェーンのシステム

ここでは、食品業界を例に、コールドチェーンのシステムについて紹介します。

コールドチェーンのシステム

① 生産
生産地で、野菜などを収穫後、より新鮮な状態で加工を行う必要があります。いかに早く次の過程に移れるかが食品の品質に大きな影響を与えます。

② 加工
まずは、食品の種類に応じ、人工的に一定期間低温にさらすことで、鮮度を維持します。例えば、野菜や果物は温度管理がされた状態で「予冷」されます。

③ 物流
加工まで済むと輸送が行われます。食品の鮮度は時間経過とともに落ちてしまい、輸送先が遠ければ遠いほど鮮度を保つのは難しくなります。そこで、食品の品質維持に重要な温度を、冷蔵・冷凍・保冷が可能な専用車や、冷却・保冷用の資材で管理することで出来る限り鮮度を保ちます。物流はコールドチェーンにおいて非常に重要な役割を担っています。

④ 販売
輸送された食品は、スーパーマーケット等を通して一般消費者に販売されます。店内でも、常温で並べられることはなく、温度管理のためのショーケースの中に並べられます。鮮度維持のために冷蔵・冷凍管理が可能な設備を整備するのは販売店にとって必須といえるでしょう。

⑤ 消費
皆さんが食品を購入した時、すぐに消費することもあれば、冷蔵庫に入れてしばらく保管することもあるかと思います。今や家庭に冷蔵庫や冷凍庫があるのは当たり前の世の中ですが、これもコールドチェーンの一部なのです。
また温度管理だけでなく、包装技術の向上も品質維持に役立っています。高機能な包装材は内部の酸素と二酸化炭素の割合や、湿度を適切に保つことができます。

輸送品ごとの温度帯の違い

コールドチェーンを利用する業界は様々です。それぞれが輸送する荷物によって、管理に最適な温度を設定する必要があります。
輸送品毎の温度帯の違いをいくつかご紹介します。
近年の物流プロセスでは、倉庫業法の「基準保管温度」にて分類されている5つの温度帯を紹介します。

輸送品ごとの温度帯の違い

＞参考：一般社団法人　日本冷凍食品協会「保管温度帯について」

温度帯	温度	内容
超低温	-40℃以下	例：マグロなどマグロなどの赤身は時間の変化に伴い変色、味が落ちてしまいます。通常の冷凍庫（-20℃～-30℃）では、品質劣化を防ぐことができないため、超低温で保管します。
冷凍	-18℃以下	例：魚介類、食肉、氷菓など冷凍を利用すると、雑菌が繁殖しにくくなり、鮮度を長く保つことができるため、凍結によって食品の腐敗や劣化を防ぐことができます。またアイスクリームなど冷凍状態で食べるものも、冷凍保管が必要です。
冷蔵	-18℃～10℃まで	例：生鮮食品（食肉・魚介類・野菜）、加工食品スーパーやコンビニなどに並ぶ多くの生鮮食品や加工食品の保管に利用されます。冷凍に比べて味や食感が極端に落ちることは少ないものの、保管期間は短くなってしまいます。
チルド	-5℃～5℃ まで	例：生菓子（プディング・ケーキ）、スープなど温度帯は冷蔵の中に含まれますが、食品の性質上より厳しい管理が求められるときに利用されます。保存できる日数の短いものが多く、食品の温度が低いほど品質が保たれ、かつ冷凍すると品質が落ちてしまう食品に適しています。
常温	5℃～18℃ まで	例：米、穀物、調味料など常温保管で問題ない食品も、低温を維持することで品質の劣化を防ぐことができる場合に利用されます。