RFIDとは?用語の意味や重要性、メリット・デメリットを詳しく紹介

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皆さんは「RFID」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「聞いたことはあるけどよく知らない」「なんだか難しそう」と感じる方が多いかもしれませんが、私たちの身近なところにも、RFIDの技術は使われています。
今回は、RFIDとは何か、仕組みやメリット・デメリットなどを踏まえて、皆さんが「なんとなく知っているRFID」について詳しく紹介します。

RFIDとは?用語の意味や重要性、メリット・デメリットを詳しく紹介

RFIDは無線通信で情報を読み書きするシステム

RFIDとは

RFID(Radio Frequency Identification)は、電波を使用して専用タグの情報を読み書きする自動認識技術です。専用のタグは「RFタグ」や「電子タグ」「ICカード」「ICタグ」などと呼ばれ、情報を読み書きできる記録媒体を指します。
RFIDが使われているものとして、SuicaやPASMOといった「交通系ICカード」のほか、「ETCカード」「セルフレジ」などが挙げられるでしょう。いずれも読み取り端末などに専用のタグをかざし、人を介さず無線通信で情報を読み取るシステムです。

< RFIDの歴史 >

RFIDは、1940年頃、各国の軍需産業や防衛産業の発展とともに、大規模な戦争などにおいて敵機や軍用機の監視に使用されたことが始まりといわれています。
1990年代後半になると、RFID機材の小型化と低価格化に成功したこと、RFID規格標準化の取り組みが実施されたことなどによって、普及が加速していきます。2000年代には、食に関わる安全性確保のため、流通経路の明確化と管理(トレーサビリティ)の手段として、RFIDを導入する企業が増えました。

現在は、さらなるRFIDの低価格化や技術の発展によって汎用性が高くなり、様々な業界で幅広く活用されるようになっています。有名企業が導入を進めたことのほか、昨今の課題である、労働力不足問題や業務改善などを解決する手段として注目が高まっています。

※トレーサビリティの詳細は以下のコラムで紹介しています。
トレーサビリティとは|メリットと課題、普及したきっかけや関連用語を解説

< バーコード・QRコードとの違い >

RFIDと似たものとして、同様に専用リーダで読み取るバーコードとQRコードがあります。
バーコードやQRコードは、導入や運用のコストが低いというメリットがあります。読み取り可能な範囲はいずれも数十cmと短く、書き込みはできません。読み取り面が見えている必要があるので、汚れたりしわが寄ったりすると、利用できなくなる弱点がありますが、バーコードは数十字程度、QRコードは数字のみなら最大7,089字のデータ容量があります。

RFIDはバーコードやQRコードと比較して、導入や運用のコストは高めです。ただし、読み取り可能な範囲は数mと長く、遮蔽物の影響を受けにくいため、タグが見えていなくても読み取ることができます。情報を読み取るだけでなく書き込みが可能で、データ容量も多く数千字程度です。

RFIDはバーコードやQRコードに代わる技術として注目されていますが、使用する環境や目的によっては、コストがかさんでメリットをうまく活かせないこともあるでしょう。導入する場合は、特徴やメリット・デメリットを理解した上で検討することが重要です。

RFIDの仕組みと構成要素

RFIDは、「RFタグ(専用タグ)」「リーダライタ」のほか、管理や処理を行う「システム・アプリ」の3つで構成されており、下記のような流れで情報が伝達されています。

RFIDとは

1. リーダライタからの発信された情報を、RFタグが受け取る

2. RFタグは内蔵されているICチップ内の情報をアンテナから発信、リーダライタがRFタグから送られてきた情報を受け取る

3. リーダライタが受け取った情報をシステムやアプリでデータ処理する

RFIDは「1」~「2」の流れを1秒間に何度も行い、情報を行き来させることで、情報の読み取り、書き込みを行っています。「3」で情報を処理することで、在庫管理や棚卸といった作業を、短時間で効率良く行うことが可能です。

< RFタグの特徴 >

RFタグとは

RFIDを構成する要素として、まずRFタグ(専用タグ)があります。RFタグの内部には、ICチップやアンテナなどの電子部品が埋め込まれており、構造や利用する電波の周波数帯、タグの形、素材などで、様々な種類に分けられます。

・バッテリー構造による分類

種類 特徴
パッシブタイプ RFIDリーダからの電波をエネルギー元として動作する。タグにバッテリーを搭載しないため安価。商品タグなどに利用される。
アクティブタイプ 電源を内蔵している。長距離通信が可能だが、タグのサイズは大きく、比較的高価。大規模な倉庫での資材管理などに利用される。
セミパッシブタイプ
(セミアクティブ)
内蔵電源を使用して電波を発信。リーダライタから電波が照射されたときだけ動作し、通信距離が長め。入退室管理などで利用される。

・周波数帯の違いによる分類

種類 特徴
LF帯(135KHz以下) 通信距離は10cm程度だが、通信が環境に作用されにくい。車のキーレスエントリーなどで利用されている。
HF帯(13.56MHz帯) 通信距離は50cm程度で、水に強い。電子マネーや個人認証でよく用いられている。
UHF帯(900MHz帯) 複数のタグを一括で読み取り可能、通信距離は1~10mと長い。水分や金属には弱い。物流のコンテナ管理や在庫管理などで利用される。
マイクロ波帯(2.45GHz帯) 通信距離は2m前後。アンテナが小さいため小型化でき、製造ラインの個体識別や位置管理、書類管理などに利用される。

・形や素材による分類

種類 特徴
ラベル型タグ 商品タグやシール状になっているものなどがある。汎用性が高いが、金属面では読み取れない。勤怠管理や物流管理で利用される。
カード型タグ 非接触のICカードなどが該当し、勤怠管理や身分証明の識別などで利用される。
金属対応型タグ RFタグの欠点である、金属面での読み取りが可能。金属素材の個体管理で利用される。
セラミックス型タグ 耐水・耐熱・耐薬品性に優れ、特殊な環境下で利用されている。

このほかにも、RFIDタグは様々な分類があります。導入する際は、使用する用途や環境に合わせてRFIDタグを選んでみてください。

< リーダライタの特徴 >

リーダライタとは

RFタグを読み込んだり書き込んだりする専用の機材はリーダライタと呼ばれ、RFタグと併せて使用します。
RFタグ同様、リーダライタにも様々な種類があるため、用途別に素材や形状を選び、最も適したタイプを選びましょう。ただし、RFタグとリーダライタは、周波数帯が一致している必要がある点に注意してください。

・リーダライタの種類

リーダライタの名称 用途 特徴
ハンディ型 店舗や倉庫で作業や移動を伴う場合
・商品の検品
・在庫の棚卸しなど
小型で導入しやすい。作業や移動を伴う場合も、使用者とともに持ち運びが可能。店舗や倉庫などでの使用に適している。
スマホ型 複数台のリーダライタを同時に使用できるため、作業効率が高い。用途の幅が広がっていることも特徴で、近年はアプリケーションと連動させるなど開発が進んでいる。
設置型 店舗や倉庫で常に同じ動作を行う場合
・入荷、出荷時の検品
・店舗でのレジ決済
・販売店舗にて決裁前商品の持出防止(出入り口のゲート)
非接触ICカードや店舗のレジなど身近なところで使われている。設置型のリーダライタは、自らRFタグを近づけることで読み取りが可能になるため、用途が限られる。
ゲート型 物流倉庫など
・一括での読み取り
・定期的な大量検品
主に物流倉庫で導入されている。
商品の通過経路などにゲートを設置、作業を行いながらRFタグの情報を読み取ることが多い。大量検品が可能なため、作業量が大幅に削減できる。

事業者がRFIDを導入する際のメリット

RFIDのメリット・デメリット

様々な種類や用途があるRFIDですが、導入することで事業者にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。RFID導入の主なメリットは、下記の4つがあります。

< 業務効率の向上・省人化 >

備品管理や在庫管理は、単純かつ繰り返しが多い、いわゆるルーティン作業が主です。ただし、自社の商品・製品を管理する上で重要な作業であり、管理のための人手が必要という問題がありました。
RFIDを用いると、一定の離れたところからリーダライタをかざすだけで、RFタグのついた商品を大量に読み取ることができます。同時に、「管理No」「製造No」「製造年月日」などがデータとして記録されることで、人的な作業による情報の記録ミスも防げるでしょう。

< データを一括で管理し、データ分析に活用できる >

RFIDはデータの書き込み可能で、さらには何度も読み書きでき、繰り返し使用できるタイプのRFタグもあります。データ化された情報を用いれば、商品の発送状況などの集計・分析についての精度が上がるでしょう。
さらに、ペーパーレス化や省スペース化など、保管場所を問わず長期間データ保管ができる点にもメリットがあります。

< 山積みの商品もそのままの状態で読み取り可能 >

山積みになっている商品の検品、箱の中に入っている製品の個数確認などの場合、商品を移動したり積み替えたりして、箱を開けて中にあるタグを一つひとつチェックしなければなりません。
RFIDの場合、電波が届く範囲であれば、見えていないRFタグもすべて読み取ることが可能で、商品が山積みの状態でも商品情報を把握することができます。また、特定のタグを指定して読み取ることができるため、大量の在庫の中から対象物を探すときにも役立つでしょう。

< 表面が汚れていても読み取りできる >

面そのものが情報を表しているバーコートやQRコードと違い、RFIDはタグの中に情報が書き込まれています。そのため、輸送の段階で汚れてしまったり、シールが貼られていたり、文字が書かれたりしていても、問題なく読み取りが可能です。
また、サイズや形状、素材が様々で、利用する環境に合わせて防水や防塵などの加工ができる点もメリットでしょう。

RFIDを導入する際の注意点

RFIDは汎用性が高く便利なものですが、事業者が導入する際はデメリットも知っておくことが重要です。続いては、RFIDを導入する際の注意点を紹介します。

< 導入コストがかかる >

RFIDの導入にあたって、一番のハードルがコストでしょう。RFタグやリーダライタの低価格化が進んでいるとはいえ、導入するとなると初期投資が必要になります。
また、一度導入すれば別の方式に変えるのは難しく、運用する上でのランニングコストがいくらかかるかも含めて検討する必要があります。

< 読み取れない環境が存在する >

RFタグは、種類によって金属面だとうまく読み取れなかったり、接触しないと読み取れなかったりする場合があります。RFタグとリーダライタは、種類ごとの特性を把握した上で、導入を検討している環境や作業内容に合わせたものを選ぶ必要があります。

物流業界でのRFID活用例

労働力不足解消や業務効率向上などの一助となるとして注目されるRFIDは、物流業界でも活用されています。いくつか例を見てみましょう。

< 車両管理の効率化 >

車両管理にもRFIDが利用されています。車両にRFタグを搭載し、出入口にゲート型のリードライタを設置すると、その車両の入退場時の時間や履歴が自動的に記録され、管理が効率化されます。
また、登録車両を判別するなどの使い方もでき、セキュリティの面でも効果を発揮するでしょう。RFIDは倉庫などでの活用だけでなく、レンタカー、重機のリース業などでも、車両管理や機材管理の効率化を目的として導入されています。

< 在庫管理・個体管理の省力化 >

物流センターで行われる商品の在庫管理は、物、時間、数量を常に適正に保ち、必要なときに商品をきちんと供給できる状態を維持するための業務です。入荷日、出荷日、ロット番号、商品種別など、煩雑な情報を一括で管理しなければならず、単純ながら重要な業務です。
こういった業務は、単純かつ繰り返しが多い、いわゆるルーティン作業が主であるため、RFID導入によって、手作業の業務を省力化し、人的ミスを削減できるでしょう。

※物流センターの詳細は以下のコラムで紹介しています。
物流センターとは?役割や種類について徹底解説

RFIDの活用事例

RFIDはコスト面や環境面のデメリットは存在しますが、これからも技術の発展が期待される分野です。業務の効率化や労働力不足をはじめ、今後も取り組むべき課題の解決策のひとつだといえるでしょう。ここでは、RFIDの活用事例についてご紹介します。

< ファーストリテイリング:業務の省力化とCS(顧客満足度)向上 >

株式会社ファーストリテイリングが展開するアパレルブランド「ユニクロ」と「GU」は、年代を問わないシンプルで機能性の優れた商品を展開することで、高い人気を誇ります。しかし、それが災いして、一度にたくさんの商品を購入するお客様でレジは長蛇の列。従業員が商品をレジ処理し、畳んで袋に入れる作業でさらに列が伸びる...という悪循環が続いていました。

そこで、2018年から全商品にRFタグを導入し、店舗での販売・商品管理だけではなく、倉庫での入出荷検品や在庫管理、棚卸などの人手のかかる作業の自動化・省人化に成功しました。流通経路におけるすべての業務の効率化と顧客満足度の向上が叶い、多くのメディアで取り上げられています。「RFID導入の最も有名な成功事例」といえるでしょう。

< コンビニ各社:サプライチェーンの効率化 >

サプライチェーンの代名詞であるコンビニエンスストアでも、大規模なRFIDの導入施策が実施されています。2017年、コンビニ各社と経済産業省は、「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を発表し、2025年までのロードマップを策定しました。宣言文では、下記のように発表されています。

・宣言文

(1)2025年までに、セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップ、ニューデイズは、全ての取扱商品(推計1000億個/年)に電子タグを貼付け、商品の個品管理を実現する
(2)その際、電子タグを用いて取得した情報の一部をサプライチェーンに提供することを検討する
(3)2018年を目処に、セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップ、ニューデイズは、特定の地域で、取扱商品に電子タグを貼付け、商品の個品管理を実現するための実験を開始する

これによって、レジ・検品・棚卸業務の高速化、防犯ゲートを用いた万引防止、消費期限管理の効率化による食品ロス削減などが見込めます。さらに、電子タグから取得された情報をサプライチェーン上で共有することができれば、市場に流通している在庫量を踏まえてメーカーが生産量を柔軟に調整したり、トラックの空き情報を共有して共同配送を進めたりするなど、製造・物流・卸・小売の垣根を越えた無駄の削減が実現できるでしょう。

※サプライチェーンの詳細は以下のコラムで紹介しています。
サプライチェーンとは|用語の意味やサプライチェーンマネジメントについて紹介

RFIDの導入が課題解決につながる可能性がある

今回は、RFIDの仕組みやメリット・デメリット、活用事例などについてご説明しました。もし現在、課題に感じていることがRFIDを導入することで解決できるのであれば、まずはRFIDについて詳しく知り、解決策のひとつとして検討してみるのもいいかもしれません。
今後、デメリットであるコストが改善し、より一層RFタグの普及が進んでいくことで、様々な場面でRFIDにふれることができるようになるでしょう。

※QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です。