5Sとは-用語の意味や重要性、メリット・デメリットを詳しく紹介

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皆さんは「5S」や「3M」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
物流の現場などでは、大きな文字で「5Sを徹底しましょう!」、「3Mをなくそう!」などが書かれたポスターを見かけることがあると思います。
5Sは、整理・整頓・清掃・清潔・しつけのそれぞれの頭文字をとり「5S」、3Mは、ムリ、ムダ、ムラの頭文字から「3M」と呼ばれています。
職場の生産性や作業効率、安全性に深く関わっているこれらの取り組みは、昔から実践されていますが、働き方改革が行われている現在でも注目を集めています。
今回は、用語の意味や歴史を踏まえ、重要性、メリット・デメリットを詳しく紹介していきます。
これから5Sに取り組む方も、現在取り組んでいる方も是非ご活用ください!

5Sとは-用語の意味や重要性、メリット・デメリットを詳しく紹介

5Sとは何か、5Sの意味

整理(seiri)・整頓(seiton)・清掃(seisou)・清潔(seiketu)・しつけ(situke)

「5S」とは、そもそも何でしょうか。
5Sは、整理(seiri)・整頓(seiton)・清掃(seisou)・清潔(seiketu)・しつけ(situke)のそれぞれの頭文字がすべて「S」であり、かつその「S」が5つあるため、5S【ごえす】と呼ばれています。
また、関連した用語には以下のものがあり、いずれも似たような意味を持ちます。

・3S【さんえす】
整理(seiri)・整頓(seiton)・清掃(seisou)の3つに重点を置いたもの

・4S【よんえす】
整理(seiri)・整頓(seiton)・清掃(seisou)・清潔(seiketu)の4つに重点を置いたもの

5Sの「5つのS」は、決して難しい単語で構成しているわけではありません。これらは、皆さんの日常生活で、一度は聞いたことのある単語であることに気が付くと思います。5つの単語だけを見てみると、「私は毎日掃除をしている」、「身の回りの整理・整頓を心掛けている」など、すでに5Sを行っているのでは?と思われる方もいるでしょう。
しかし5Sには明確なビジネス上の意味が存在しています。

辞書では、

職場管理上にて、徹底されるべき行動・状態に対し、レベル要素を加味して表現した言葉の総称。
整理から整頓、清掃、清潔、躾に向かうほど実施・定着化の難易度が上がるため「5Sが徹底されている職場は、管理レベルが高い」と言われる。

とされています。

ビジネス上での5Sは、職場や組織づくりのための取り組みの一つと言えるでしょう。
では、私たちが日常的に使用する単語の意味と、ビジネス上の5Sを構成する上での単語の味の違いをもう少し詳しく見ていきましょう。

項目 一般的な意味(広辞苑より) 5S(ビジネス)での意味
整理(seiri) 乱れた状態にあるものを整え、秩序正しくすること。 乱れた状態にあるものを、定めたルール、基準に沿って整える。
必要なものと不要なものを分けて、判別できるようにする等。
整頓(seiton) よく整った状態にすること。きちんと片付ける事。 整理したものを、よく整え、片づける事。必要なものが一目でみてどこにあるか分かるようにすること。
清掃(seisou) きれいに掃除すること。さっぱりとはらい除くこと。 掃除をすること。整理した状態を整える事。
清潔(seiketu) よごれがなくきれいなこと。衛生的なこと。 常に整える事。
しつけ(situke) 身についた礼儀作法、身だしなみ。 整えた状態を保てるように仕組みを保つこと。維持・管理をすること。

引用:広辞苑

それぞれの単語の、一般的な意味とビジネス上での意味をそれぞれ比較すると、ビジネス上の意味の方が各単語を詳細に定義していることが分かります。
例えば「整理」と「整頓」について詳しく見てみましょう。一般的な意味を見ると、どちらも意味が似通っているように思えます。

一方、5Sにおける整理は、ルール、基準に沿って乱れた状態にあるものを整え、必要性を判断するという意味です。さらに、その整理したものを整え、片づけることで、必要なものがどこにあるかすぐわかるよう見える化(整頓)する流れに繋がります。

では、整理、整頓を例に挙げ、5Sでこれらを行う真の意味を考えてみましょう。
例えば、仕事を行っている際、「必要な書類がどれかわからないくらい机の上が散乱している」、「どこかにデータをしまったはずだが、忘れてしまった」等、目的のものやデータを探した経験はありませんか。
この時、目的のものを見つけるために、それぞれの必要性を確認する判断や、ものを探す、誰かに聞くなどという行動が発生します。多くのムダが発生し、時間やコストの面で損失を被っていることが分かるでしょう。
それくらいのムダは、問題ではないと思うかもしれませんが、「毎日」の事なので、「塵も積もれば山となる」状態で、この先ムダを生み出し続けることになるわけです。

このムダな行動は、仕事にどんな影響を及ぼすのでしょうか。そこに5Sを行う意味が隠れています。
必要性の判断や、ものを探す、誰かに聞くという行動は、「生産性を下げるもの」です。この自覚を持たないまま業務に取り組み続けてしまうと、業務時間が長引いてしまい残業が必要になるかもしれません。また、他の人の業務を中断させてしまい、その人の業務にも支障が出ることも考えられます。自分にとっても周囲にとってもストレスを与え、良いことは一つもありません。このようなムダは徹底的に削減する必要があるのです。

5S活動とは

5Sとは何か、5Sの意味を理解したところで、5つのSに対して具体的にどのような活動をしていくのかさらに詳しく見ていきましょう。

①整理
現在所有しているものや、保管しているものをできる限り洗い出し把握します。まずは範囲を決めて、備品や機材の棚卸等を行い、リストなどにまとめると把握しやすいでしょう。
その上で、必要なものはどれなのか分けていきます。何が必要かの判断は、個人差が起こりやすい為、共通のルールや基準をきめて判断をしていくことが重要です。
さらに、ルールや基準をきめることで、後々ものを追加しやすくなります。また、誰でも必要・不必要の判断ができるようになるため、管理もしやすくなります。
不必要なものについては、処分をすることが一番良いですが、判断に迷う場合は、一時的に保管をする、決めた場所にしまっておくなど、きちんと判別できるようにしておく必要があります。

②整頓
必要・不必要を判断し、分離する「整理」ができていても、すぐに目的のものを見つけて、手に取ることができる状態をつくりだせなければ、必要なものがどこにあるのか「探す」作業が何度も発生します。
必要なものを見える化、定位置化、定量化するために、それぞれのものに所定の場所を作り、常にその場所に、必要なだけものを置けるようにしましょう。この時、見た瞬間に目的のものが分かるように配置できているかがポイントです。
書類などは、背表紙のラベリングやナンバリング、目次やページを付与する、備品や機材は、それぞれのものが重ならないような平置きや壁掛けをする、等、いわゆる「ものをしまう工夫」が必要になります。
この整頓が最も重要な工程と言えるかもしれません。

③清掃
整理、整頓が行えたとしても、複数人が、2~3回使用すれば整えた環境が乱れて、再び整理・整頓できていない状態に戻ってしまいます。そこで、「清掃」を行い、ごみや汚れがない状態に掃除をします。
ただ掃除をするわけではなく、ものが増えすぎていないか整理する、また、所定の場所に格納できているか整頓することを同時に行っていきます。
①整理~③清掃を連動して行うことで、日々の清掃の中でメンテナンスを行うことができるようになります。

④清潔
上記の①~③を実施した環境を常に乱れのない状態にしておくことが重要です。この工程を徹底的に行うことが大切です。

⑤しつけ
「清潔」と連動して行っていきます。常に乱れのない状態にしておくためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。
職場を常にきれいに使うよう習慣付けるための仕組みづくりを行っていきます。
例えば、5Sの担当者、あるいはリーダーに任命します。その担当者・リーダーを中心にチームメンバーへ指導や教育をする、チェックシートや5Sの日などを作り管理できるルールづくりをする等が挙げられます。いかに日常の業務と連動してムリなく5Sの取り組みが続けられるか、仕組みを整えていくことが重要だと言えます。

5Sの歴史

どのような経緯で、5Sが始まり、現在まで意欲的に取り組まれてきたのでしょうか。
5Sの発祥は、産業工学もしくは生産工学を意味するインダストリアルエンジニアリング(IE)からと言われています。産業工学もしくは生産工学は、広義の意味としては、生産の質や量、つまりは生産のムダや不具合発生などを無くすための技術、学問、と言われています。
人材から設備、モノづくりおいての材料に至るすべての統合的な生産システムを作り出すことをインダストリアルエンジニアリング(IE)と呼んでいます。この統合的な生産システムを作り出すための一つの取り組みとして、5Sが発展、生産に関わる分野から他の業界に広まったと考えられます。
また、「5S」と、トヨタの生産方式には非常に深い関わりがあり、5Sの代表例と言えるでしょう。

トヨタの生産方式と5S

トヨタの生産方式の基本は2本の柱です。

  • (1)「自働化」
    異常が発生したら機械がただちに停止して、不良品を造らない考え方
  • (2)「ジャスト・イン・タイム」
    各工程が必要なものだけを、流れるように停滞なく生産する考え方
    「自働化」と「ジャスト・イン・タイム」の基本思想によりトヨタ生産方式は、1台ずつお客様の要望に合ったクルマを、「確かな品質」で手際よく「タイムリー」に造ることができるのです。

引用:トヨタ自動車株式会「トヨタ生産方式」

では、5Sはこのトヨタ生産方式のどの部分に関わってくるのでしょうか。もう少し詳しく見てみましょう。

項目 内容
カイゼン
(改善)
今の作業や業務に常に疑問を持つことで、より良いものにし、作業効率を向上させ続ける。
常に見直しを図ることで、作業の適正化、安全性の確認などを行える。
見える化 作業中に生じた問題や課題は、全員で共有し、分かるように、見えるようにする。
早く問題を発見し、すぐに解決する体制が、トラブル・ミスが発生しにくい状況を作る。
なぜなぜ 問題が発生したら、その一つの問題に5回以上「なぜ」と問うことで問題を表面的ではなく、深く理解し、根本的な原因を探ることができる。
ムダ取り 小さなムダが積み重なり、大きなムダとなり、時間やコストの面で損失を被っている。

①加工のムダ、②つくりすぎのムダ、③在庫のムダ、④手持ち(待ち)のムダ、⑤運搬のムダ、⑥動作のムダ、⑦不良をつくるムダ

5Sは、特にムダ取りの部分に関連が深いといえるでしょう。「トヨタ生産方式」と聞くと、自分の業務とはあまり関係がないと思いがちですが、7つのムダは常に発生しており、自身の業務内容を見直すと、きっと7つのムダのどれかに当てはまるのではないでしょうか。そういう意味でも5Sはトヨタ生産方式の中でも取り組みやすい活動だと言えます。

5Sの導入方法

ここでは、実際に5Sを導入するにあたり、どのような流れで取り組みを進めたらよいのかを具体的に紹介します。

〈ステップ1〉定量的な目標を設定する
まずは、目標を設置しましょう。目標はより具体的に、数値化、定量化すると効果の確認がしやすいです。例えば、作業時間を○時間削減する、仕掛りを○件削減する等、小さな目標で良いので設定をしてみます。目標設定をあいまいにすると「5Sを行う事」自体が目的になってしまいがちです。5Sを行うことでどういった成果を得たいのか、きちんと考えてみましょう。

〈ステップ2〉現状の分析をする
目標が設定出来たら現状の作業・業務内容を元に、現状を把握しましょう。
具体的には、棚卸が効果的です。業務の状況把握、備品の把握、両方の状況分析に使える手段です。例えば、備品の棚卸では、「どの場所に、何が、いくつあるか」等を表などにまとめると管理がしやすく、また5Sを実施する過程でも作成した表を活用することができます。業務も同様に棚卸を行うことで、どの場面で7つのムダが生じているかが把握できるようになります。

〈ステップ3〉チーム・部署で5Sへの理解を促し、全員が取り組む
目標を共有する、担当制にする、スローガンを決める等、チーム・部署で一丸となり、徹底的に5Sを行えるよう、情報を共有しましょう。この取り組みは、組織づくりの一つとしても役立つはずです。

〈ステップ4〉5Sを実施する
①整理→②整頓→③清掃→④清潔→⑤しつけの順番で取り組みます。実施内容の詳細は、5S活動とはにて紹介した内容を参考にしてみてください。まずは、必要なものと不要なものを分ける整理から始めてみましょう。

〈ステップ5〉5Sが保たれている状態を維持・管理する
④清潔、⑤しつけでも述べましたが、職場を常にきれいに使うよう習慣付けるための仕組みづくりが必要となります。定着させるポイントは、物事の流れや関連性をきちんと理解し、5Sの重要性を認識できている状態を作ることです。合わせて、チェックシートの活用、定期的な棚卸、5Sデーの実施等、日々の業務の一部として仕組み化し、定着させていきましょう。

5Sと職場

では、職場ごとにどんな5Sの取り組みができ、どのような効果を得ることができるのでしょうか。3つの職場環境を例に挙げてそれぞれについて見ていきましょう。

職場 取り組み例と期待できる効果
事務所 事務用品、書類の整理
・分類わけ、並べる(仕事順、時系列、使用頻度順)
・ファイリング、ナンバリング、配色、大きさをそろえる(見てすぐわかる状態)

共有スペースの整理・管理
・ものの削減、必要量の把握、保管期間を決めて保管する
・配置は作業導線を意識した形に変更する

【効果】作業効率の向上・ミスの削減・業務の均一化・省スペース化
店舗 商品、店舗作業用の機器の整理
・入れ替え頻度が多いものについては専用スペースを作成(保管期間を設定)

商品、在庫の管理
・保管時、見えない部分をできる限り減らす
・先入れ先出しの徹底、発注点の設定

【効果】作業効率の向上・繰り返し作業削減・在庫の適正管理
倉庫 商品の配置管理
・赤札(不要品を区別するための札・シール)を活用し、期限を決めて管理をする

作業スペース確保・整備、作業導線確保・整備など
・区画線を引く、姿置きをする等、定位置化する
・三定(定位置、定品、定量)の実施

【効果】生産性向上・安全性、作業品質の向上など

それぞれ業務内容は違いますが、作業効率や生産性の向上、職場の環境改善などの効果が得られることが分かります。

5Sのメリット・デメリット

最後に5Sのメリット・デメリットについてまとめてみましょう。

〈メリット〉

  • 生産性、作業効率が向上する
  • コミュニケーションツールの一つになる
  • 職場環境の改善

やはりメリットとしては、ムダが無くなり、効率が上がることで、仕事がスピードアップし最終的には売上や利益が上がることにあると言えます。また、職場で5S活動を行うことにより、職場環境が改善していくところもメリットの一つです。5Sが行き届いた職場であれば、ストレスなく目的のものを手に取ることができるようになります。上司や同僚の「あの書類を出して」という依頼にも迅速に対応できるはずです。

〈デメリット〉

  • 即効性がない
  • 長期的な維持・管理が必要

デメリットを上げるとすれば、長期的に取り組んでいく必要があるという点です。導入してから、効果を実感できる状態になるまでは、5S活動にある程度の労力を割く必要があり、職場で定着するまでも時間がかかります。職場という大きな環境でどのように始めたらよいかわからないという方も多いかと思います。5Sは個人でも取り入れることができ、自分の業務の範疇から部分的に5Sを始めることも可能です。あなたのデスクやロッカーはどのような状態でしょうか。必要なものはすぐに取り出せますか。まずは身の回りの一部でも5Sを実践してみると、効果を実感できるはずです。

まとめ

簡単なように見える5Sですが、意味や目的を理解し徹底的に取り組むことが重要であり、業務の効率化において大きな効果をもたらすことが分かりました。また組織づくりの一つとしてもコミュニケーションを深めることができる取り組みとも言えます。時代の変化に応じて、最新のツールやシステムの導入などを検討しがちですが、時には作業の基本に戻って、5Sに取り組んでみるのも良いかもしれません。