ミルクランをわかりやすく説明-メリット・デメリットや導入事例
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皆さんはミルクランと聞いて何を思い浮かべますか?由来は名前にある通り牛乳業者が行う巡回集荷からきていますが、調達物流の一つとして物流業界で広く使われている用語です。
この記事ではミルクランとは何かを分かりやすく説明します。
ミルクラン(ミルクラン方式)とは
牛乳業者が牧場から牛乳を集める際、それぞれの牧場が車両を手配しメーカー工場に配達しに行くのではなく、工場から出す車両(集乳ローリー)が各牧場の酪農家のもとを回り、まとめて集乳を実施します。このような、発注側が車両を手配し、点在する集荷先を巡回して荷物を集めることを「ミルクラン」と呼びます。ミルクランのランは「run(走る、定期的に運行する)」という意味です。
複数箇所を巡回し集荷を行うことから、日本語では巡回集荷とも言い、共同輸送のなかの一方式とされています。
ミルクランのメリット・デメリット
<メリット>
1.発荷主は輸送コストが削減できる
牛乳業界におけるミルクランのメリットとしては、酪農家が専用車両(集乳ローリー)を用意しなくて済むことが挙げられます。牛乳の輸送では品質・衛生管理が重要なため、普通のトラック車両では運べません。温度管理等が可能な特殊車両を手配し、管理・維持することは酪農家にとっても負担が大きく、ミルクラン方式で集荷してもらえればコスト削減になります。
このメリットは、現在ミルクラン方式を活用しているその他の業界でも同じようです。例えば機械メーカーが製造に必要な部品・原材料の調達のために、複数のサプライヤーに発注したとします。ミルクラン方式であればメーカーが車両を手配し、サプライヤーのもとを巡回して部品を集荷していきますから、サプライヤー側は輸送費を削減できるでしょう。
2.着荷主は検品コストを削減できる
これだけ聞くと、着荷主であるメーカーは輸送費の負担が増してしまいデメリットになるのでは?と思う方もいるでしょう。荷受人のメリットとしては、検品コストの削減があります。
もしサプライヤーごとに部品が配達された場合、工場や倉庫では受け取るたびに検品作業を行う必要があります。調達先が多ければ多いほど配達の回数も増え、都度実施する検品作業に人手を割かなくてはなりません。
しかし、ミルクラン方式を利用して自分たちで集荷してしまえば、必要な部品や原材料をまとめて回収することができ、検品も工場に戻ってきたタイミングで一気に終わらせることができます。
検品回数を減らすことでも物流コストを削減することができるのです。
3.環境に優しい
忘れてはいけないのが、ミルクランが環境にやさしい調達物流であることです。環境への取り組みで一番よく耳にするのがCO2排出量の削減ではないかと思います。ミルクランを行うことで、各サプライヤーで手配が必要だった車両が、工場発の一台(または数台)となります。トラック内の積載効率も向上し、CO2排出量を最小限に抑えることができるでしょう。
<デメリット>
メリットに目を向けると、すべての調達物流でミルクラン方式を採用すべき!と思った方もいるのではないでしょうか。残念ながら、常にメリットを得られるわけではありません。場合によっては集荷効率が悪化し、デメリットが生じる可能性もあります。
1.集荷先同士が離れている場合、輸送コストが増加する
集荷先が近距離圏内にまとまっていれば問題ありませんが、一箇所でも遠方にあると集荷車両の移動距離が大幅に延び、巡回が完了するまでに時間がかかってしまいます。サプライヤー別の方が輸送の距離が短く済むのであれば、巡回する意味がありません。
2.集荷先の立地条件で車両が制限される場合、調達コストが増加する
多数の調達先を管理していると、サプライヤーによって事業規模もまちまちになっていくかと思います。中小企業の中には自社内に十分なスペースを確保できず、大型トラックの受け入れが難しいサプライヤーもいるでしょう。その場合、他の集荷先はミルクラン方式を適用できても、トラックが入れない集荷先のみ別途小型車両を用意しなくてはならず、トータルの調達コストが増加してしまう可能性があります。
導入のポイント
ミルクラン方式の導入時は、本当にコスト削減につながるのか綿密なシミュレーションを行うことが重要です。デメリットで取り上げたように、集荷先同士の距離や立地条件によっては輸送を効率化できる巡回方法が見つからない場合もあります。
また、導入後に想定外の問題が発生した際も対応できるよう、各サプライヤーとしっかり打ち合わせしておくことも大切です。配送管理システムなどをミルクランと合わせて活用し、関係者が車両の位置情報や集荷状況を確認できる体制を構築しておくのも良いでしょう。
導入事例
ここでは国土交通省・経済産業省が主導となって実施している「グリーン物流パートナーシップ会議」において、令和三年度に物流構造改革表彰を受賞した全国共同配送でミルクラン方式が取り組まれていましたので紹介します。
事業者 | 株式会社ライフサポート・エガワ(代表) |
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概要 | 大手コンビニ向けの共同配送の集荷業務においてミルクラン方式を採用。全国の中小メーカー150社が参加し、ミルクランでハブ拠点に集められた商品は全国のデポに直接納品する。 なお、本取組はミルクランだけでなくモーダルシフトやリードタイム順守のための乗り換え運行の実施、労働環境の整備など様々な施策を実施している。 |
効果 | ミルクラン方式の効果として、荷物がまとめられたことで積載効率が向上したほか、荷札や送り状の添付を廃止したことで、集荷作業にかかる時間が削減された。 また、本施策を総合した結果のCO2排出削減率は47%とされる。 |
出典:令和3年度グリーン物流パートナーシップ会議優良事業者表彰事業概要(国土交通省)
ちなみにグリーン物流パートナーシップでは、様々な企業が環境負荷の低減に向けてミルクラン方式だけでなく、共同輸送やモーダルシフトなど様々な取組を公表しています。是非参考にしてみてください。
参考:グリーン物流パートナーシップ公式ホームページ
まとめ
今回はミルクラン(ミルクラン方式)について、由来となった牛乳業者の巡回輸送も紹介しながら、意味やメリット・デメリット、事例についてわかりやすく説明しました。参考になれば幸いです。
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