モーダルシフトとは-なぜ進まないのか、意味や語源からメリット・デメリットまでわかりやすく説明
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モーダルシフトとは、荷物の輸送において、環境に影響が少なく、優しい輸送モード(輸送方法)への転換を進めていくことです。具体的には、トラック輸送(自動車)から船舶や鉄道へ輸送を切り替えていくという方法です。モーダルシフトが注目される背景として、2021年地球温暖化対策計画にて、2030年度に温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目指すこと、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けることを表明したことが挙げられます。産業分野でも低炭素社会の実現に向けて、特に二酸化炭素(以下CO2)削減の取り組みが加速しています。最新の総合物流施策大綱内でも、「モーダルシフトのさらなる推進」、「各輸送モード等の低炭素化・脱炭素化の促進」が掲げられている一方で、取り組みがなかなか進まないという課題があります。今回は、モーダルシフトについて意味や語源、現在の課題、メリット・デメリットなど幅広く紹介しながら、分かりやすく説明していきます。
モーダルシフトとは何か?語源と意味をあわせて解説
モーダルシフト【modal shift】とは、環境への負担が少ない輸送方法の転換を表す言葉です。
国土交通省では、モーダルシフトを以下のように説明しています。
モーダルシフトとは、トラック等の自動車で行われている貨物輸送を環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換することをいいます。
モーダル【modal】は、「モードの」という意味で、「モード」とは、方法、様式、形式という意味を持ち、今回は、輸送モードを指します。物流業界では、様々な輸送方法(手段)があり、それを輸送モードといいます。
シフト【shift】は、「位置を移動すること、状態や体制などを移行すること」という意味です。今回は、状態や体制などを移行すること、を指します。
〈輸送モードとは〉
大きく分けると4つに大別されています。①トラック輸送、②船舶輸送、③鉄道輸送、④航空輸送、その他、バイク、自転車、人力などがあります。
ではなぜ、輸送モードの転換に注目が集まっているのでしょうか。
モーダルシフトの考え方は1980年代に省エネルギー対策・労働力不足問題の課題を解決するために提案されたことが始まりといわれています。その後1990年代半ば以降、地球環境問題に関わる取り組みとして広く知られるようになりました。
2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組みを定めている「パリ協定」では、以下が定められています。
- (1)世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすること
- (2)そのためできる限り早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとること
それを受けて、日本の取り組みとして、2030年度に温室効果ガスを-46%(2013年度比)さらに、50%の高みに向け、挑戦を続けていくと表明をしました。
日本の温室効果ガス排出量の内訳をみると、CO2が約90%を占めており、部門別にみると、①産業部門(工場など)、②運輸部門(自動車)、③商業・サービス・事業所、④家庭の順になっています。近年、産業、運輸部門は減少傾向ですが、全体の割合の多くを占めているため、意欲的なCO2排出量削減の取り組みが求められています。
運輸部門の詳細を見てみると、約40%が貨物輸送であり、そのほとんどがガソリン、軽油によるCO2排出となっているため、環境への負荷が少ない輸送モードへの転換であるモーダルシフトが注目されるようになりました。
鉄道、船舶が推奨されているのは、それぞれの輸送モードのCO2排出量の違いが理由です。トラック輸送(営業用貨物車)から船舶、鉄道に輸送モードを変化すれば、大幅なCO2排出量の削減が可能となります。特に鉄道はトラック輸送の約1/10までCO2排出量を抑えることができます。
国土交通省 モーダルシフトとは情報をもとに作成
モーダルシフトの進まない理由・デメリット
トラック輸送に比べ、CO2排出量を大幅に削減できる非常に魅力的な施策ですが、モーダルシフトを調べてみると、「なかなか導入が進まない」という現状が見えてきます。
(1)天候や自然災害などの影響を受けやすい
導入が進まない最大の理由は、大雨や雪などの天候や自然災害によって輸送の確実性が低くなることにあります。
天候による遅延はトラック輸送でも同じリスクがあると考えがちですが、影響の範囲が大きく異なります。大きな影響が出てしまう理由としては、「輸送する貨物」、「輸送ルート」、「運行ダイヤ」等の要因が考えられます。
①輸送する貨物
トラック輸送に比べて、鉄道・船舶での輸送では一度で運ぶ貨物の量が多く、また輸送途中での貨物の出し入れが難しくなります。トラック輸送であれば、近くを走行している別のトラックに積み替える、貨物や荷物を分散させる等、対応が可能です。
②輸送ルート
例えば、鉄道の場合、線路が一路線しかないため、そのルートが使えなくなると別ルートへの変更が難しくなります。トラック輸送であれば、迂回する、別の道路に切り替える等、別ルートでの輸送が可能です。
③運行ダイヤ
鉄道や船舶の場合、運行ダイヤが決まっており、輸送する貨物が集まるのを待つ必要があります。一方のトラック輸送では、各のトラックで出発時間が異なり、複数の運行ダイヤでトラックが走行するため、すべてのトラックが遅延する、動けなくなるという状況は起こりにくいと言えます。
(2)ラストワンマイルへの対応
ラストワンマイルとは、配達店などの最終拠点から、お客様に荷物をお届けするまでの区間を指します。トラック輸送であれば、大都市間の長い距離を走行する幹線輸送と、ラストワンマイルの両方の輸送に対応することができます。一方で、鉄道・船舶での輸送は、「駅から駅の間」、「港から港の間」のみの輸送となるため、臨機応変に対応しにくいと言えます。またトラック輸送に比べ、専門的な技術が必要なため、人材確保や、育成が難しいのも課題です。
(3)その他
- 限られた輸送区間、輸送地域が対象となるため限定的、駅や港の整備が必要
- トラック輸送に比べ、荷物の破損リスクが高い
- コンテナサイズに合わせた、荷物のサイズや量の調整が必要
モーダルシフトのメリット
一方でモーダルシフトの導入によってもたらされるメリットはとても大きく、積極的に取り組むべき内容だと言えます。
(1)二酸化炭素排出量の削減による、環境に優しい輸送
先で述べたように、日本として、温室効果ガスの削減を明言している中で、輸送におけるCO2排出量を大幅に削減できることがモーダルシフトの最大のメリットです。
(2)大量輸送、輸送の効率化によるドライバー不足の解消
働き方改革の一環として、2024年4月から自動車運転業務にも労働時間の上限規制が施行されます。(2024年問題)それに伴い、労働力不足が懸念されていますが、モーダルシフトの「大量輸送」は大量の貨物を少ない人員で一度に運ぶことを可能とし、結果として輸送効率を高める事に繋がります。
船舶・鉄道での輸送
モーダルシフトでは、トラック輸送から船舶や鉄道での輸送に転換していきます。ここでは、どのような種類の船舶や鉄道が導入されているのか紹介をしていきます。
〈荷物と貨物の違い〉
この記事では、荷物とは、「小型で人力で持ち運ぶことができるもの」、貨物とは、「人が持ち運ぶなどして運べない大きい重いもの(トラック、鉄道、船等で運ぶもの)」を指します。
< 船舶での輸送 >
船舶での輸送は、輸送する貨物(荷物)によって使い分けがされています。
種類 | 説明 |
---|---|
RORO船(ローローせん) | トラック自体をそのまま運ぶことができる、貨物や貨物自動車専用の貨物船。船に乗り降り用の入り口があり、トラックが自ら船に乗り込み、降りることができる。ロールオン(Roll-On)、ロールオフ(Roll-Off)の頭文字をとりRORO船と呼ぶ。積み込み、積み降ろしなどの荷役作業が少なくなるため、作業効率化できることが最大のメリット。 |
コンテナ船 | 貨物を箱状の入れ物につめて輸送する「コンテナ」を用いて運ぶ貨物船。あらかじめ、コンテナの種類やサイズ、運航スケジュール等が決められているものが多い。定期便等に用いられ、安定した輸送が得られ、荷主のコストメリットも大きい。 |
長距離輸送フェリー | 自動車や貨物、旅客を同時に運ぶ船。RORO船とコンテナ船は、貨物に特化しているが、フェリーは「貨物以外」も同じ船で輸送する。RORO船で対応できない特殊、大型車両が送可能。安定性と輸送スピードを兼ね備えている。 |
< 鉄道での輸送 >
鉄道は、地域によって機関車の種類が分かれています。
種類 | 説明 |
---|---|
直流形電機機関車 コンテナ電車 |
東海道・山陽線や首都圏各線区にて走行しているEF210形式、上越線などの勾配線区にて走行しているEH200形式、東京~大阪間を約6時間で走行しているM250系等がある。 |
交直流形電機機関車 | 日本海縦貫線を中心に走行しているEF510形式、首都圏~北海道間のほか、九州北部にて走行しているEH500形式、両機関車とも交流・直流電化区間の双方で走行が可能。 |
ディーゼル機関車 ハイブリッド機関車 |
北海道内にて走行しているDF200形式、環境に配慮したハイブリッド方式(ディーゼルエンジン発電機と蓄電池)の入換機関車HD300形式等がある。環境に配慮したハイブリッド方式(ディーゼルエンジン発電機と蓄電池)の入換機関車。 |
< 総合物流施策大綱とモーダルシフト >
日本の物流政策を示した、「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)」の中でもモーダルシフトは、物流政策の柱の一つとして位置づけられています。
(1)物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化(簡素で滑らかな物流の実現)
(2)労働力不足対策と物流構造改革の推進(担い手にやさしい物流の実現)
(3)強靱で持続可能な物流ネットワークの構築(強くてしなやかな物流の実現)
特に(3)の中の「モーダルシフトのさらなる推進」では、鉄道、船による貨物輸送量の増加、合わせて各輸送モードの低炭素化が掲げられています。
< モーダルシフトの関連用語 >
・SDGs【Sustainable Development Goals】 エス・ディー・ジーズ
世界共通の国際的な持続可能な開発目標のことで、すべての国連加盟国が合意し、15年間(2016年~2030年)で達成するために掲げた17の目標がある。
・ESG【Environment Social Governance】
環境【Environment】・社会【Social】・ガバナンス【Governance】の略で、企業が事業や活動を行っていく上で取り組むべき3つの内容をまとめたもの。例えば、環境は、CO2排出量削減、環境負荷の少ない開発、社会はダイバーシティなどの環境整備、ガバナンスは公正な企業運営や判断を行う仕組みづくりなどが挙げられる。
・サステナビリティ
持続可能性のことで、環境・社会・経済の視点から考える。この3つの視点から持続可能な企業経営を実行していく「サステナビリティ経営」等がある。
・カーボンニュートラル
温室効果ガスの排出量と森林などの吸収量(植林・森林管理)の均整をとり、差し引きゼロ(排出量=吸収量)となるようにする取り組み。温室効果ガスの削減と森林などの環境保全の両輪を強化ずる必要がある。似ている言葉に「脱炭素」があり、これはCO2排出量自体をゼロにする取り組みを指す。
・グリーン物流
物流のCO2排出量を削減する取り組みの総称。モーダルシフトもグリーン物流の一種だと言える。似ている言葉に「ホワイト物流」があるが、こちらは物流の仕組みを整え労働環境、生産性を向上する活動。
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※1 当社調べです。以下の条件により2020年度のCO2排出量を算出しました。
①CO2排出量は、経済産業省・国土交通省「物流分野のCO2排出量に関する算定方法ガイドライン」記載の「燃費法」を用いて算出しました。
②JITBOXチャーター便については、集荷先から発ターミナル、着ターミナルから配達先までを4t車で、積載効率を58%(経済産業省・国土交通省「物流分野のCO2排出量に関する算定方法ガイドライン」より、最大積載量2,000~3,999kgの営業用車両の平均積載効率)として、また発ターミナルから着ターミナルまでをJITBOXチャーター便で使用している運行用車両(JITBOXを平均的に17本積むことができる車両で、積載効率については2020年度 当社加盟会社の実績にて算出)で配送したと仮定。
③トラック貸切便については、集荷先から配達先までを直接4t車で、積載効率は58%で配送したと仮定。
④トラック貸切便、JITBOXチャーター便ともに、同じ集荷先から配達先まで配送したと仮定し、集荷先、配送先及びその間の距離は、2020年度のJITBOXチャーター便の配送実績を用いています。トラック貸切便においては、集荷先から配送先の平均距離を、JITBOXチャーター便においては、集荷先から発ターミナル、発ターミナルから着ターミナル、着ターミナルから配送先のそれぞれの平均距離を用いて算出しました。
※2 杉の木のCO2吸収量は、関東森林管理局HP掲載の値(1本当たり約14kg/年) に基づき算出しました。
※3 ※1③の合計値を基に算出した割合です。配送区間によって、CO2排出量の削減効果は異なります。
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