商流とは-意味や物流との違い、フロー図を用いてわかりやすく解説!

卸売・小売業物流管理

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日々、我々が使用している商品やサービスは、調達、製造、物流、販売、消費という一連の流れの中で、生産者から消費者へ、様々な関係者の間を経て提供されていきます。その流れの中で「所持・保持・所有している権利」の流れを表したものが商流であり、それを自社のビジネスの流れに当てはめ、図式化したものを商流図といいます。ビジネスにおいて、商流を理解することは自社を取り巻く商品、サービスの流れをより深く理解することに繋がります。今回は、商流の意味、似ている言葉、特に物流との関係や違いなどについて、フロー図を用いてわかりやすく紹介します。

商流とは-意味や物流との違い、フロー図を用いてわかりやすく解説!

商流とは、商流の意味、商流図とは

原料の調達、商品の製造、保管・在庫管理・配送などの物流、店舗等での販売、消費という一連の流れの中で、物は生産者から販売者、販売者から消費者へ関係者の間を渡りながら提供されていきます。この流れの中で特に商品あるいは物の「所有権」がどこにあるのかを商流と呼びます。「所有権の流れ=商流」といわれることが一般的です。
辞書での商流の意味を見てみると、以下となっています。

商品の売買に伴う所有権や受発注情報の流れ。商品の物的な移動をいう「物流」に対する語。また、サプライチェーンのような複数企業間の取引関係を指す場合もある。商的流通。

引用:商流の意味

まずは、商流で重要とされている「所有権」とはそもそもどのようなものなのか、もう少し詳しく見ていきましょう。
「所有権」は、民法(民法第206条)で定められた権利の中の一つで、字のごとく「民のための法律」と言われます。日常生活での一般的な事柄について、自身と相手の間(私人間)の関係性に重点を置いた形で権利や義務を定めています。
その中で、「所有権」とは物を自由に使用・収益・処分できる権利であり、主に3つが明確化されています。

項目 内容
使用権 自由に物を使うことができる権利
収益権 物から生まれる利益を得ることができる権利
自分が持っているものを貸して、利益を得ることができる
処分権 物の破壊、廃棄などに加え、売却や権利を設定することができる権利

参考:所有権とは~民法206条~

次に、いくつかの仕入れ方法を例に挙げながら、「所有権」と「物」、それぞれの流れに注目して見ていきましょう。ビジネスでは「所有権」と「物」の流れは、必ずしも同じではないため、それが商流を難解にしている点かと思います。

(1)買取仕入
発注した商品やサービス(物)が手元に届き、確認が終了した時点で売買契約が成立し、所有権が移ります。この場合は、物の流れと所有権の流れは同じであることが多く、生産者、販売者、消費者の順番で所有権と物が移っていきます。

購入のタイミングで所有権が生産者→販売者→消費者へ移る 仕入れ時、販売時に売買契約が成立し、所有権が移る

(2)委託仕入
販売者が商品を生産者から一時的に預かり、店舗などに商品を置いておく契約であるため、この時点では所有権は生産者のままです。商品が消費者に販売され、購入した時点で生産者から消費者に所有権が移ります。

購入のタイミングで所有権が生産者から直接消費者へ移る 売れ残りの商品などは販売者から生産者が引き取る(販売する店舗などに商品を置いてもらう契約をする)

(3)消化仕入
委託仕入の一つで、大きく異なる点は、消費者からの注文があってから初めて仕入れを行うという点です。所有権については、商品が消費者に販売され、購入した時点で生産者から消費者に移ります。

注文が入った後仕入れを行う 購入のタイミングで所有権が生産者から消費者へ移る

仕入れ方法によって、物と所有権の流れが異なることが分かります。それぞれのビジネスでどのような商流を経て、商品が提供されているかを明確にすることで商流の理解に繋がるのではないでしょうか。
最後に、商品が生産者から消費者へ提供される中で、商流と合わせてよく使われる言葉を紹介していきます。

〈商流図とは〉
自社の商流の流れを図にしたものを商流図といいます。自社、商品の生産を行う仕入先、販売を行う販売者、消費者などの関係者と事業内容、年間売り上げ、従業員数などの情報を図式化してまとめていきます。

〈商流と似た言葉〉

流通 生産者から消費者へ、商品やサービスを円滑に届けられるようにする仕組み

単語 説明
流通 生産者から消費者へ、商品やサービスを円滑に届けられるようにする仕組み。「商流」、「物流」、「金流」、「情報流」を総合的に合わせたものです。
物流 物の流れに注目したものが、物流です。物流はAからBへ物を移動させるというイメージがあるかと思いますが、他にも様々な役割があります。特に6大要素といわれる、輸送、保管、荷役、包装、流通加工、輸送情報においては、流通の中の距離、時間の隔たりをなくすための重要な要素となっています。
混在しやすい物流との違いについては、後ほど詳しく説明します。
金流 お金の流れに注目したものが、金流です。金流は、商流と同様、物と同じ動きをするわけではありません。まず、支払いを行う消費者から生産者の方向へと流れていきます。なぜなら商品やサービスと対価としてお金を支払うからです。また、支払い方によっても金流は異なってきます。
情報流 情報の流れに注目したものが、情報流です。情報流は、生産者、あるいは消費者の一方方向からの流れではなく、双方に存在します。生産者から消費者に届けられる情報には、様々な内容がありますが、近年は特に商品情報や安全性などが重要とされています。

商流と混在しやすい似た言葉ですが、それぞれが何の流れを表しているのかに注目できれば、より理解が深まると思われます。

商流と物流の違い・フロー図

商品が生産者から消費者へ提供される中での「所有権」の流れを商流、「物」の流れ(AからBへの物の移動)を物流といいます。何の流れに視点を置いているかの違いがあります。
言葉上に違いは見られますが、商流と物流は関わりが深く、双方の流れを理解することが重要となります。
今回は、3PLを例に、商流と物流の立ち位置を確認していきましょう。特に受注作業においては商流が非常に重要です。

〈3PLとは〉
3rd Party Logistics(サードパーティーロジスティクス)の略で商品や荷物の輸送に関係のない企業が、第三者として関わる物流を3PLといいます。自社で物流部門を持ち、物流業務を行うわけではなく、業務の外部委託(物流アウトソーシング)を行います。物流コンサルティングのような面も持ち合わせており、物流戦略を構築することで高度な物流を実現することができます。

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商流の重要性と理解するメリット

商流と物流が深く関わっていることからも、商流の重要性を理解することができるでしょう。
近年は、3PLなど物流アウトソーシングの活用が盛んになり、商流と物流をそれぞれ独立させて考える事が多くなりました。

〈商物一致〉
商流と物流が一致している事業を指し、規模が小さい場合に用いられる考え方です。
自社の営業担当者が顧客からの注文を受注、自社で商品の仕入れを行い(在庫管理)自社で商品を配送するという流れで、商品管理、受発注管理、入出荷作業、配送管理における商流、物流全体を管理していく必要があります。販売の規模が小さい場合は、余計な在庫を抱えたりする必要が無く、商品の販売(商流)と、納品(物流)が同じタイミングで流れていきます。

〈商物分離〉
商流と物流を分けて、それぞれを独立させている事業を指し、規模が大きく、外部に一部業務委託する場合に用いられる考え方です。営業部門と物流部門を分ける方法が一般的です。事業の規模が大きくなると、受注量の増加に伴い、物流業務の作業負担が増えていき、すべてを自社で対応するのは難しくなっていきます。分離した物流部門を外部に業務委託することで、自社では賄いきれなかった物流サービスの提供と業務の効率化が実現でき、自社は営業部門に注力できるようになります。

また、物流システムなどのIT化が進む中で、商流を理解することにより、コスト面、品質面などの、どの部分に課題があるかを明確化させることができ、商流の最適化を行うことができるようになるでしょう。

まとめ

商流を理解することで、自社のビジネスをより深く理解できるようになり、商品やサービスの需要と供給のバランスを見ながら業務に当たれるようになります。今後さらに流通のIT化が進み、様々なシステムの導入を検討していく中で、商流の知識が改善の一助や自社の商流を見直す機会となれば幸いです。