横持ち・横持ち配送とは-意味や費用の考え方、トラックからの横持ちなどシーン別に紹介!
更新日:
始めて横持ちという言葉を聞くと、荷物を横向きに持つ、あるいは、横(両サイド)を待つ、「荷物の持ち方」のことだと認識しがちです。ところが実は、物流業界では全く違う2つの意味で「横持ち」という言葉が使われています。1つ目は、荷物の配送途中での横持ちです。社内物流などで自店の荷物を目的地に送る際、自店で配達はせず、他の拠点を経由して配達することを横持ち・横持ち配送と言います。2つ目は、トラックからの横持ちです。特に引っ越し作業などで、引っ越し先の建物・お宅まで大きなトラックが行けないとき、荷物を2トントラックなどに積み替えてそこまで運搬することを言います。
今回は、似ているようで似ていない2つの「横持ち」について、それぞれの意味や費用の考え方、シーン別の横持ち、横持ちと似た言葉などを詳しく紹介します。
横持ちの意味
横持ちには、利用シーンによって大きく2つの意味が存在しています。まずは、辞書の意味を確認していきましょう。
① 別になんらかの事情でまっすぐに目的地に運搬できないで、回り道を避けられないような場合の輸送。
② 材料・製品などの使用・据付け場所まで運送トラックが行けないとき、トラックから降ろして小運搬すること。運送業者が請求するこのための費用を横持ち料金という。
① は、物流拠点や自社内の物流などで用いられます。
荷物の輸送を行う際は、コスト・リードタイム・作業量などから、最短距離で輸送することが望ましいと言われます。しかし、現在は顧客ニーズの多様化やリスク回避の観点から、物流の機能(輸送、保管、荷役、包装、流通加工、輸送情報)を分散、あるいはアウトソーシング(外部委託)する企業が増えてきました。また、集荷、配達の効率を高めるために、大きな物流拠点から配達先ごとの拠点に荷物を移動させることがしばしばあります。
② は、トラックからの横持ちで、特に引っ越し作業などで用いられます。
荷物のお届け先の周辺の道が狭いなど、集荷先・配達先の周辺環境により荷物の使用・備え付け場所まで運送トラックが行けないとき、荷物をトラックから降ろして少しの距離を運搬することを言います。
物流での横持ち
まずは、物流の横持ちについて詳しく説明していきます。
自社内の物流でよく用いられる輸送の方法で、本来の輸送では、A地点からB地点へ商品・荷物を運びます。
その際、最短距離、時間でいかにコストをかけず運び荷物を届けるかという方法を考えますが、横持ちでの輸送は距離・時間・コストより、「どのルートで、どの拠点に商品を輸送するか」という部分に重点を置いています。
物流での横持ちにおける拠点とは、大きく分けると、以下のように多岐にわたります。
- 商品を生産する工場や生産拠点
- 商品を保管する物流倉庫、物流センター
- 商品を販売する店舗、小売店
- 営業拠点である支店・営業所など
横持ちの作業内容・シーン別の横持ち
より横持ち配送のイメージするために、物流の横持ちについて、作業内容やシーン別に紹介していきます。
〈物流拠点間の横持ち〉
物流拠点間での横持ち配送は、大きな物流拠点から配達先ごとの拠点に荷物を移動させる方法で、横持ち配送が行われる主な理由は、輸送効率の効率化です。
〈工場での横持ち〉
工場での横持ち配送が行われる場合は、以下のような場合が考えられます。
・生産拠点で商品の大量生産を行い、その商品を別の場所の倉庫で保管する場合、生産拠点から保管倉庫への商品の輸送を行う。・生産ラインを分けている場合などは生産拠点間の輸送が必要になる。
〈倉庫での横持ち〉
倉庫での横持ち配送が行われる場合は、以下のような場合が考えられます。
・繁忙期など一時的に物量が増える場合は、倉庫間で在庫調整を行うための輸送を行う。
・販売拠点(店舗など)から倉庫へ過剰在庫を返却する。
・販売拠点間の在庫調整による輸送を行う。
とくに大手の小売り(スーパーなど)へ納品する場合は、商品の欠品を起こすことができません。各店舗への在庫補充を安定的に行うためにも横持ち配送はなくてはならない手法なのです。
横持ち配送とは?横持ちが行われる理由
1つ目の物流拠点にて行われる横持ちを特に「横持ち配送」と言います。
通常の最短距離の輸送に比べ、距離や時間、コストがかかるにも関わらず横持ち配送が行われる理由をもう少し詳しく見ていきましょう。
横持ち配送が行われている、最大の理由は、配達業務の効率化です。配達業務は拠点ごとに担当のエリアを持ち、そのエリア宛ての荷物の配達を配達店(拠点)が担当することが一般的です。
輸送する物量が多い大都市間の幹線輸送(例:東京-大阪間)では、大量の荷物を積み込むことができる大型トラックで輸送することが効率的なのは明らかですが、担当エリアを持つ配達業務においては、横持ち配送を行う方が効率的な配達業務を行うことができます。
〈ハブアンドスポーク輸送〉
物流の輸送方法の一つに、ハブアンドスポーク輸送というものがあります。これは、ハブ拠点(中心拠点)に荷物を集約させ、スポーク拠点(エリアごとの小規模な拠点)毎に仕分けて運搬する輸送方式のことをいい、物流現場では、スポーク拠点への輸送を特に横持ち配送と呼びます。
本来は、それぞれの拠点ごとに輸送体制を用意しなければならず、非常に複雑な体制になりがちですが、ハブ拠点、スポーク拠点と整備することで、ハブ拠点に一度全ての荷物を集約してから各スポーク拠点に配送すれば、全ての拠点に荷物を届けられます。
〈豆知識!なぜ横持ち配送と呼ぶのか?〉
「横持ち配達」ではなく、「横持ち配送」と呼ぶのはなぜでしょうか。
そもそも配送という言葉は、荷物が移動している過程に重点を置いています。一方で、配達は、最終的な荷物のお届け先であるお客様(納品先)への荷物の受け渡し完了に重点を置いています。横持ちでは自社内の拠点間の荷物の移動を行っているため、横持ち配送と呼ばれているのでしょう。
トラックからの横持ち・引っ越しでの横持ち
次にトラックからの横持ち、特に引っ越し作業などでの横持ちを説明していきます。
引っ越しのお客様の集荷場所、配達場所をイメージしてみましょう。家と家の間隔が狭い住宅地、オフィスビル街などでは、荷物の集荷先、配達先の周辺の道が狭いなど、周辺環境により大型トラックが侵入できないことがあります。その為、荷物の使用・備え付け場所などまで大型の輸送トラックが行けないとき、荷物をトラックから降ろして少しの距離を運搬します。
具体的には、大型トラックは、荷物の積み込み、積み下ろしが可能な拠点で待機し、2トントラックなどで待機している大型トラックまで荷物を運搬します。一見、非効率に感じるかもしれませんが、2トントラックで10トントラックに横持ちする場合と、2トントラックを5台用意する場合は、前者の方が効率的に荷物を輸送することができるのです。
< 縦持ち・横持ちの違い >
引っ越しでの横持ちと一緒に使われる言葉に「縦持ち」があります。縦持ちとは、2階建て以上のビルなどの建物内にて、上下階間で荷物を移動させる輸送のことをいいます。人力、エレベーターなどを用いて階を跨ぐ輸送です。
〈縦持ちの例〉
・3階で集荷し、人力(エレベーター)で1階に降ろした後、トラックに積み付けをした・エレベーターで7階へ荷物を配達した
横持ち費用とは
横持ち費用とは、横持ちが発生した際に支払う費用の事です。
物流での横持ち配送の費用は、自社のコストとなります。その為、一括で大量の荷物を横持ち配送する、横持ち配送する拠点間の距離を近くする、ミスやトラブルによる不要な横持ち配送を発生させないなど、コストを削減する工夫が必要になります。
また、横持ち配送を外部の運送会社に委託した際の費用の考え方は、1日あたりの契約が基本となり計算されます。1日トラック1台当たり何輸送(往復)するので○○円と費用が定められることが多く、さらに契約の台数によって、「費用×台数×契約日数」で費用が計算されます。
一方で、引っ越しなどのトラックからの横持ちは、お客様(荷主)に請求します。費用の考え方は、横持ちの作業時間で計算されます。横持ちを行う回数は影響せず、あくまでも何時間作業にかかったかで費用が計算されます。
横持ち費用は各業者によって異なるので、事前に確認しておきましょう。
横持ちと似た言葉
最後に横持ちと似た言葉を紹介します。合わせて覚えておきましょう。
〈回送〉
回送には、大きく2つ意味があり、物流現場で横持ちと同じような意味で用いられることがあります。
① 一度送られてきたものを、改めて他の場所に送ること。転送。
② 電車やバスなどを、空車で他の場所へ動かすこと。
〈ミルクラン〉
共同輸送の一つの方法で、巡回集荷ともよばれます。
発注側が車両を手配し、点在する集荷先を巡回して荷物を集めることを「ミルクラン」と呼びます。
まとめ
今回は2つの横持ちについて紹介しました。横持ちは、物流現場でも、引っ越しでも非常に重要な意味を持ち、なくてはならない作業です。横持ちは一見コストに思われがちですが、効率を高めるためにあえて行う場合もあります。横持ちを理解することで、また違った視点で自社の物流やサービスを見ることができ、新たな気付きがあるかもしれません。