ハブアンドスポークとは-意味やネットワークについてシーン別に紹介!
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ハブアンドスポークの「ハブ」は自転車のタイヤなどの中心部、「スポーク」はその中心軸と外側の輪を繋ぐ棒を表しています。ビジネスの場面では、中心地から細部まで効率的に繋ぐネットワークのことを指すことが多く、物流業界、航空業界、IT業界などの業界で使われている言葉です。車輪や棒と聞くと、なんとなく自転車のタイヤなどをイメージすると思いますが、まさにこの形態がそれぞれの業界に大きな影響をもたらし、現在もネットワーク手段の一つとして幅広く導入されています。今回は、ハブアンドスポークとは何か、シーン別・業界別に紹介しながら、メリット、デメリットを踏まえ、特に物流業界について詳しく紹介していきます。
ハブアンドスポークとは
まずは、辞書の意味を確認していきましょう。
ハブ【hub】
1 車輪の中心部。また、自動車の車輪を取り付ける部分の円板や、航空機用エンジンのプロペラを取り付ける金具。
2 中心。中核。
3 コンピューターシステムで、複数の端末を集めて連結する中継器。LANなどを組むのに使われ、減衰した電気信号を復元する機能などをもつ。集線装置。
スポーク【spoke】
自転車などの車輪の軸と輪とを放射状につなぐ細い棒。輻(や)。
ハブアンドスポークは、ハブアンドスポークシステム、ハブアンドスポーク方式などとも呼ばれています。
ハブアンドスポークを調べると一緒に「トポロジー最適化」という考え方が出てきます。まずは、トポロジー最適化がどのような考え方か見ていきましょう。
〈トポロジー最適化〉
モノづくりで用いられる考え方で設計したい空間にどのように材料を配置すれば最適な構造となるのかを計算する方法のことです。
トポロジー最適化の考え方を基に、ある空間内に複数ある拠点をどのように配置し、結び付ければ最適なネットワークになるのか、考えられた結果がハブアンドスポークとなります。
ハブアンドスポークが用いられるのは大きく分けて以下の場合です。
項目 | シーン | 内容 |
---|---|---|
1 | 物流業界 | 輸送網(ネットワーク)のこと |
2 | 航空業界 | 航空網のこと |
3 | IT業界 | コンピューターネットワークの接続形態のこと |
異なるシーンで用いられていますが、考え方は同じです。ハブと呼ばれる中心部をいくつものスポークで繋ぎ、より効率的な形態を作ることを目的としています。
【事例】利用シーン別のハブアンドスポーク
物流業界、航空業界、IT業界でそれぞれどのようにハブアンドスポークが用いられているのか、シーン別に詳しくハブアンドスポークを見ていきましょう。
物流のハブアンドスポーク
物流業界では、AからBにものを輸送するということを基軸としていますが、AからBへの輸送方式には、いくつかの方式があります。
〈直送便 PtoP(ポイントトゥポイント)〉
考え方は単純で、発送地から目的地まで直接ものを運ぶという輸送方式です。
特に大量生産、大量輸送、ある程度まとまった量のものを、決まった場所へ送っていた長距離トラックの時代、低コストで効率的な輸送を行える手段でした。
しかし、次第に荷物の小口化や輸送ネットワークの細分化が進んでいく中で、物流拠点数が増加していきます。PtoPでは、拠点間ごとそれぞれ相互輸送が行える経路が必要となるため、拠点数が増加するとネットワーク数は増え、複雑化するのがデメリットと言えるでしょう。
そんな中登場したのが、ハブアンドスポークです。
〈ハブアンドスポーク〉
PtoPが拠点間を直接結ぶ輸送方法であるのに対し、ハブアンドスポークは、ハブ拠点(中心拠点)に荷物を一度集約させ、その荷物を各拠点(スポーク)ごとに仕分けて輸送することをいいます。PtoPでは、複雑な輸送ネットワークが必要でしたが、ハブアンドスポークでは、ハブ拠点に一度荷物を集めてから、各拠点に荷物を移動させていくので拠点ごとの相互輸送が整理され、ネットワーク数が整備され少ない輸送でカバーすることができます。
ハブアンドスポークでの輸送は、輸送ネットワークが広域で、拠点数を多く持つ規模の大きい物流業者で効果が高いと言われています。
物流でのハブアンドスポークは、FedEx(フェデックス)が発祥と言われており、日本ではヤマト運輸の宅急便ネットワークにも導入されています。
航空のハブアンドスポーク
人や荷物を運ぶ航空業界でもハブアンドスポークの考え方が使われています。
物流業界と同じような考え方で、ハブ空港と呼ばれる、航空網の中心拠点を設け、人や荷物の乗り換え・積み替えを行い効率的な輸送が行います。ハブ空港は、世界各地に設置されており、日本においては、羽田空港や成田空港がハブ空港としての機能も果たしています。
ITのハブアンドスポーク
IT業界でのハブアンドスポークは、コンピューターネットワークの接続形態を指します。
ネットワークの接続形態をネットワークトポロジーと言い、PCやサーバなどの機器(ノード)がどのような形で接続するのかを表しています。
ネットワークトポロジーは、LANケーブルやPCをどのように接続するのかを表す「物理トポロジー」、データの流れ方を表す「論理トポロジー」の2つで構成されています。また、接続形態によってさまざまな種類があります。
接続形態 | 説明 |
---|---|
ハブアンドスポーク型 (スター型) |
「ハブ」と呼ばれる集線装置やスイッチ、ルーターなどを中心に置き、そこから複数の機器へ接続する形態です。最大のメリットは、どこか1か所で障害が発生しても他への影響を最小限に抑えることができる点です。 |
バス型 | 1本の線にすべての機器が接続される状態です。構成が簡単ですが、どこか1か所に障害が発生するとすべてのネットワークに影響が出てしまいます。 |
リング型 | 複数の機器をわっか状に接続される状態です。構成が簡単ですが、どこか1か所に障害が発生するとすべてのネットワークに影響が出てしまいます。 |
メリット・デメリット
物流業界のハブアンドスポークについてメリット・デメリットについてまとめてみましょう。
〈メリット〉
輸送効率の向上
ハブアンドスポークを導入することで、全体的な路線数を減らすことができます。また荷物量の少ない路線に関しては、ハブ拠点間の輸送を集約することで積載効率を高めることも可能です。
輸送距離の短縮
ハブ拠点間の輸送を集約することで、1回あたりの輸送距離を減らすことができます。その為、ドライバーの長時間労働を削減することが可能です。また、あわせて輸送コストとCO2排出量も削減することができます。
〈デメリット〉
機能停止に陥るリスクがある
ハブ拠点に機能が集約されるため、天候や災害等で大きな影響が出ると、ネットワーク自体の機能が止まってしまうリスクがあります。
初期投資が必要
ハブ拠点の設置や、ネットワークの整備など、導入するにはある程度の初期投資が必要となります。
まとめ
今回はシーン別(業界別)それぞれのハブアンドスポークを紹介しました。いずれも効率的なネットワークを形成し、最大限活用するというものですが、それぞれのネットワークの観点から非常に重要な意味を持つことが理解できたのではないでしょうか。自分たちが良く使うハブアンドスポークの他にも様々な意味が存在していることを知ることでより深い理解に繋がると思われます。