在庫管理とは-在庫の種類と役割、在庫管理のツール、やり方について分かりやすく解説!
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せっかく発注を受けたのに在庫が欠品していた、どのように在庫管理をしたら良いかわからない、という経験はありませんか。在庫は、ただ所有すれば良いわけではなく、的確な管理がされてはじめて在庫としての役割を果たします。特に在庫管理は非常に重要な業務であり、コストと直結するため、課題を抱えている企業も多いのではないでしょうか。今回は、在庫とは何か、在庫の種類と役割、在庫管理のツール、在庫管理のやり方について、幅広く分かりやすく解説していきます。
在庫とは何か
在庫(英語:inventory; stock)の辞書の意味を見てみると、
1 商品が倉庫などにあること。また、その商品。
2 原材料・仕掛品・製品などが企業に保有されていること。また、それらの財貨。
引用:在庫の意味
在庫は様々な場面や場所で登場します。例えば、商品を製造している工場内であれば、原材料や仕掛品、出荷待ちをしている商品などがあります。また、その商品を取り扱う卸売業者や小売業者の所有する倉庫や物流センターには販売のために仕入れた商品が保管されています。このように生産や販売のために一時的に備えておくものの総称を「在庫」といいます。また、生産や販売以外にも、営業に用いる資材(パンフレットやノベルティなど)、事務用品(コピー用紙や文具類など)も在庫の一部に該当されます。
< 在庫の種類と役割 >
〈在庫の種類〉
種類 | 説明 |
---|---|
製品在庫・完成在庫 (商品在庫) |
完成している商品や製品を指し、消費者に販売される前の在庫。(小売業・流通業では商品在庫と呼ぶ)在庫は店舗で販売されるなど消費者に引き渡されるため、納期やリードタイムを考慮して在庫数や入出荷のタイミングが調整される。 |
仕掛在庫・半製品在庫 | 商品や製品の生産工程の途中に存在する在庫、生産時に一時的に生じるもので、ある程度の在庫を準備しておくことで生産をスムーズに行うことができる。そのままの状態では販売することができない。 |
原料在庫 | 原材料など、商品や製品に加工する前の元の材料となる在庫。大量に一括で仕入れることが多く、比較的多めの在庫を保有することが多い。 |
部品在庫 | 単体でも製品として扱われ、すぐに使用できる在庫。ネジやナットなど。 |
営業在庫 | 消耗品の在庫、資材(パンフレットやノベルティ類)、事務用品(コピー用紙や文具類)など。 |
店頭在庫 | 特に販売店などに陳列されている商品や製品のことをあらわす在庫。 |
このように在庫には、様々な種類があり、商品や製品の状態が変わると、在庫の呼び方も変わっていきます。在庫のどの種類が、どのような状態を表しているかが区別できると、より詳しく在庫のことが理解できるでしょう。
< 在庫の保管場所・保管方法 >
〈保管場所〉
在庫の種類や品目によって保管場所は異なります。またその保管方法についても様々です。例えば、定期的な入出庫があり、保管量が多い原材料、部品、完成品などは、倉庫や物流センターで保管されることが多いでしょう。一方、仕掛品は、工場や作業場で保管されることが多いといえます。なぜなら、工場のライン作業など次工程で使用されるため、製造工程で効率的に使用できることを優先しています。
営業在庫やあまりスペースをとらないものは、店舗やオフィスの一角で保管されることもあります。
〈保管方法〉
在庫の使用頻度や量、形状などによって保管方法を決めることもあります。
【保管方法の例】
・段ボールに入れた状態
・パレットに載せたりケースに入れた状態
・袋詰めの状態
・平置き
・ラック(パレットラック、移動ラック、フローラック、中量ラック)
< 在庫を所有するメリット >
では、在庫を所有するとどのようなメリットがあるのでしょうか。
① 在庫不足、欠品などによる機会損失を減らすことができる
ある一定量の在庫を所有することで「欲しいときにいつでも在庫がある」という状態を作り出すことができます。 何かのきっかけで、需要が急に増加しても、在庫でまかなうことができ、顧客に安心感を与えることができます。
② 納期を短くできる
在庫を所有していれば、顧客から注文が入った際にすぐに対応することができます。また、店頭販売などの場合は、現物を手に取ってみてから購入できます。
③ コストの削減ができる
仕入れコストや、スケールメリットによるコストカットが実現できます。
在庫管理とは何か
在庫管理の辞書の意味を見てみましょう。
原材料・仕掛品・製品などについて、技術的および経済的に的確な時期に適正な量を発注・補充し、最善の保管と搬出入を計画・組織・統制する方式の体系。
引用:在庫管理の意味
在庫管理とは、原材料・仕掛品・製品などの「在庫」が、必要な時に、必要な量を、きちんと供給できるように、適正な状態に保つことをいいます。在庫を管理する目的は業界や商品によって様々ですが、主な理由として挙げられるのは、「適正な在庫を所有することで、顧客に対し最適な状態で商品を提供できるようにすること」と、「在庫の無駄を無くして利益を最大化すること」です。
在庫管理は、一見簡単なように思えますが、実は様々な管理方法や考え方を活用した在庫の調整を行っています。
< 実在庫と理論在庫 >
では、具体的にどのように在庫を管理していくのでしょうか。
まずは、「理論在庫」と「実在庫」という管理方法があります。
項目 | 説明 |
---|---|
理論在庫 | 情報上の数字(在庫管理表や在庫管理システム上の数字) 【計算方法の例】 (前期末)在庫高+入庫数-出庫数=理論在庫 |
実在庫 | 棚卸での在庫数 |
〈棚卸とは〉
情報と現物の一致を図るための作業。企業の店舗や倉庫内にある材料や製品などの在庫がどのくらい残っているかを確認すること。
〈棚卸の種類〉
・一斉棚卸...ある区切りの時期(期末など)に全品目の棚卸を一斉に行う方法。
・循環棚卸...棚卸の範囲を指定して、時期をずらしながら行う方法。
項目 | 説明 |
---|---|
リスト方式 | 在庫管理表など在庫が把握できるリストを予め作成し、その在庫数と現物の在庫数を比較していく。実際に店舗や倉庫内などの在庫を数えて、リスト上の数値と数えた在庫の数に差異が無いか比較する。 |
タグ方式 | 商品の名前と数量をひとつひとつ確認し、タグ(荷札・棚札)を商品に貼り付ける事で数量を把握する。品目・数量を確認後、タグの記入を行い、すべてのカウントが終わってからタグを回収する。 |
実地棚卸 | 目視により確認の上、数量と品質のチェックを行う。帳簿や在庫管理表に在庫数としてカウントされていても、破損、汚損等により実際に使用できない可能性がある。 |
帳簿棚卸 | 在庫の出し入れのたびに種類や数量を在庫管理表に記入し、帳簿上で在庫数をチェックするもの。帳簿棚卸では、在庫の数量を常に把握できる一方で、品質チェックは行わないので破損・汚損の確認ができない。 |
〈理論在庫≠実在庫の差が生じる要因とその影響〉
理論在庫と実在庫を付け合わせてみたときに、差が生じてしまうことがあります。原因として挙げられるのは、データの記載ミス、データの入力ミス、商品のスキャンミス、盗難、紛失などです。「理論在庫≠実在庫」の影響として、自動発注のミス、欠品・過剰在庫になる可能性など、在庫を管理していく上で致命的なミスに繋がってしまいます。この事からも棚卸の重要性が理解できるでしょう。
< 在庫の回転率とは >
在庫を管理する上で、「コスト」に関わる部分は非常に重要です。なぜなら、在庫にかかるコストは、①在庫そのもの、②保管に関わるもの(保管料、管理料他)があり、在庫を寝かせることは、資金を寝かせることと同じことを意味するからです。キャッシュフローの観点から在庫自体がコストとなるため、いかに効率的に管理をしていくか、つまり在庫の回転率を早めてキャッシュフローを効率化させるか、考えていく必要があります。
ここでは在庫の回転率について紹介します。在庫の回転率とは、一定期間における在庫回転数のことです。
< 適正在庫の考え方 >
合わせて重要になるのが、「適正在庫」の考え方です。適正在庫とは、商品や製品が欲しいときに欠品せず安定的に供給でき、かつ過剰在庫にならない適正な在庫数のことをいいます。
適正在庫の考え方は、商品や製品によって異なりますが、主に2つの在庫の割合から見ていきます。
種類 | 説明 |
---|---|
サイクル在庫 | 発注に伴う変動がないときに平均的に持つ在庫。 |
安全在庫 | 突発的な在庫量の減少が生じた際や、一様でない在庫変動に対応するため、安全を見て持つ在庫。 |
例:欠品するとき
平均的な売れ行きに加え安全な在庫数を見て余分に発注したが、それ以上に売れてしまい欠品が生じた。この時、安全在庫がすべて無くなっている状態。
〈発注パターン〉
主な発注パターンを紹介します。発注は、「時期(定期・不定期)」と「量(定量・不定量)」によって決まることが多く、需要と供給のバランスを見ながら、発注方法を選択します。
種類 | 説明 | 商材例 |
---|---|---|
定期定量 | 定期的に一定の量を発注する。 | 雑誌・消耗品など |
定期不定量 | 定期的に必要な量を発注する。 | 高額商品 |
不定期定量 | ある一定量(発注点)になったら、一定の量を発注する。 | 定額商品 |
不定期不定量 | 需要に合わせて発注する。 | 特売商品・季節商品 |
基本的には、上記の発注パターンで発注を行いますが、季節用品やトレンド商品など、一時的に需要が増える商品や製品もあるため、注意深く発注方法を決める必要があります。
在庫管理のツール
① 在庫管理表
手書き・Excel(エクセル)などで、表を作成し、日々の変動数(入庫数、出庫数など)を記入して管理していく方法です。その中で最も簡易的なのが、人による目視であり、特別な費用がかかりません。ただし、ヒューマンエラーが発生しやすいため、ルーティーン化する、ダブルチェックを行う等、仕組みでの対策が必要です。
② ハンディターミナル等によるバーコード読み取り
ある一定量の在庫を抱える場合は、ハンディターミナルなどの機器を用いてバーコードを読み取ることで、情報を集約、システムに一括でデータを転送するなど、業務の効率化を図ることができます。ただし、バーコードの読み取りや数量の入力は、人による作業のためヒューマンエラーの対策が必要になります。
③ RFID(Radio Frequency Identifier)
電波を使用して専用タグの情報を読み書きする自動認識技術です。専用タグに、リーダライタをかざすと、ある一定範囲のタグ情報を瞬時に読み取ることが可能です。また、様々な形状のリーダライタがあり、設置して作業をしながら在庫管理を行うこともできます。
RFIDについては、こちらの記事で詳しく紹介しています!
RFIDとは?用語の意味や重要性、メリット・デメリットを詳しく紹介
④ 在庫管理システムの活用
多くの企業では、WMS(倉庫管理システム)で入荷から出荷までの全工程を総合的に管理しています。WMSには様々な管理システムが存在しており、在庫管理においてもその中のひとつのシステムに位置付けられます。在庫管理では、適正在庫の把握と維持が重要となるため、この一連の工程の中で管理を行うことで、より正確な管理を行うことができます。例えば、入荷管理システムで把握した情報を、在庫管理システムに反映させる、また、在庫管理システムの入荷日や製造日、出荷期限などの情報から在庫の先入れ先出しを行い、出荷管理システムが出荷指示を出すなどの連携がとられています。
在庫管理の関連用語
ここでは、在庫管理と一緒に使われる関連用語を紹介します。
〈ロケーション管理〉
ロケーション管理とは、物流倉庫や物流センターで行われる「保管場所」の管理方法です。ロケーションと言われる保管位置を商品や製品ごとに、固定したり、変動させたりしながら、保管物と保管スペースの最適化を同時に行います。
種類 | 説明 |
---|---|
固定ロケーション | 商品や製品ごとに予め保管スペースが決められており、定位置されているもの。配置が固定されるため、作業員は作業を覚えやすいメリットがあるが、保管する量が減ってもスペースを確保し続けるため、保管効率は低下してしまうデメリットがある。 |
フリーロケーション | 空いているスペースから保管をしていき、配置が流動的に変わるもの。保管効率は高まることがメリットだが、配置が覚えにくく、作業効率は低下してしまうデメリットがある。 |
ダブルトランザクション | ピッキングエリアと保管エリアを独立させて、配置する方法。 |
ロケーションについてはこちらの記事で詳しく紹介しています!
ロケーションとは-意味や類義語を解説、ロケーションが使われるシーンや物流のロケーションについて詳しく解説
〈先入れ先出し First-In First-Out(FIFO)〉
先入れ先出しは、在庫の品質を保持するために必要な基本的な考え方で、保管されている入荷日の古い商品や製品から、先に出荷していく方法です。この方法を行うことで、保管する期間を可能な限り短くすることができ、保管による商品の劣化を防ぎ、入荷時に近い品質の状態で出荷することが可能です。特に、消費期限や使用期限が製造時に予め決まっているものは、先入れ先出しを正確に行うことで廃棄ロスを減らすことができます。一番身近な先入れ先出しの例は、コンビニエンスストアやスーパーなどの商品陳列でしょう。商品を店頭に並べる際には、賞味期限の早いものを最前列に陳列しなおすことで、先入れ先出しを行っています。
〈ABC分析〉
ABC分析とは、あるひとつの評価軸(売上高、コスト、在庫数など)を定め、その数値が多い順にA、B、Cとグループ分けをし、対応の優先度を決める方法で、重点分析とも呼ばれています。考え方は、売り上げの8割は全体の2割の商品がもたらしているという「パレートの法則・8:2の法則」からきており、選択と集中を行い、それぞれのグループを最適化し、理想的な在庫管理を実現する方法です。ただし、季節商品や、一過性の商品は、不規則な動きをするため注意が必要です。
・A...最重要品目、全納品先に毎日のように出荷されている品目。在庫が切れないように意識して発注する。
・B...基本的に現状維持。毎月など定期的、あるいは在庫が切れたときに発注。
・C...より利益が見込める商品への入れ替え、取扱いをやめる等検討。在庫が切れてから発注。
※A→B→Cの順で優先度(重要度)が下がる。
〈その他〉
・発注管理、在庫回転率
・入庫管理(荷受けし・検品・検収・入荷処理・棚上げ)
・出庫管理(ピックアップ・検品・出荷作業)
・返品管理
・棚卸(実数確認・期限切れ在庫の処理)
まとめ
商品や製品の需要と供給のバランスを見ながら、様々な考え方や手法を組み合わせて適正な在庫を管理していく必要があります。また、今後はよりIT化が進み、WMSなどのシステムの活用が当たり前になってくると思いますが、システムを活用するには自身の在庫管理への理解を深める事も重要です。ぜひこの記事をご活用ください。