車上渡しとは-意味やルール、軒先渡し・軒下渡し、置き場渡しとの違いを分かりやすく説明します!
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車上渡しとは、商品や荷物の納品方法のひとつです。荷物を輸送したドライバーは、荷受人に荷物を渡しますが、その渡し方(納品方法)にはいくつかの種類があり、それぞれのルールが定められています。今回は、トラック(車)の荷台(上で)、商品や荷物を納品する(渡す)方法である「車上渡し」を中心に、その他の納品方法、関連する言葉などを幅広く紹介します。
車上渡しの意味とは
車上渡しとは、運送業でよく使われる、商品や荷物の「納品方法」を表す言葉です。つまり、トラックなどの輸送手段で、目的地への輸送を行った後、荷受人(商品や荷物を受け取る人)へと商品や荷物を渡す(納める)方法の一つとなります。字のごとく、トラック(車)の荷台(上で)、商品や荷物を納品する(渡す)方法です。
荷受人は、トラックの荷台で商品や荷物を受け取り、その後の荷下ろしは受け取った荷受人が行うことになります。
車上渡しのルールとは(定義、責任、条件)
〈定義〉
トラック(車)の荷台(上で)、商品や荷物を納品する(渡す)方法です。
〈責任の範囲〉
車上渡しでのドライバーの責任範囲は、商品や荷物を目的地まで輸送し、トラックの荷台でお客様に荷物をお渡しするところまでになります。荷物をお渡しした後は、お客様の責任となり、荷下ろしや屋内への横持ち等はお客様の負担で行うことになります。
〈条件〉
大型で重量のある荷物に適用されることが多く、人力での荷下ろしが難しい場合は、クレーンやフォークリフトなどのマテハン機器が必要となります。
< 納品の定義と運送約款 >
そもそも「納品」とはどのように定義されているのでしょうか、おさらいしてみましょう。
納品の辞書の意味を確認してみると、
品物を納入すること。また、その品物。納入とは、品物や金銭を納めること。
引用:【納品】【納入】の意味
つまり、品物をどこか(誰か)に納める、受け取り側に渡すことを意味します。ビジネスの場面では、①企業の取引と②運送業で良く使われる言葉です。①では、取引に使われる商品を納める時に使われます。②では、出荷主が用意した商品を運送会社が受け取り、納品先まで届けることを指す時に使われます。
納品についてはこちらの記事で詳しく紹介しています!
納品の定義と、「納入」や「出荷」との意味の違いを解説
納品場所や時期、量などの納品条件は、見積書や契約書等で発注前に確認します。特別な運用や納品ルールが必要となる場合は、個別契約書を締結する場合もあります。
また、運送業では、「運送約款」と呼ばれる、「運送人(荷物を輸送する会社)と荷主(荷物の送り主)との間で運送の内容を定めた契約書のひな型」が広く使われています。
運送人と荷主との間で、特に「特約(当事者間で交わされる特別な約束)」が無い限り、運送契約は運送約款に従うことになります。運送約款を用いる利点としては、多数の荷主との間で法律関係を画一的、迅速に処理することができる規定となっている事です。これにより運送人は、荷主ごとそれぞれと契約を結ぶ必要が無くなります。
〈標準貨物自動車運送約款〉
他人の需要に応じ有償で自動車(主にトラック)を使用して貨物を運送する、または不特定多数の荷主から運送依頼を受けて荷物を運送する場合に用いられます。許可制で国土交通大臣が定めています。
参考:国土交通省 標準運送約款
車上渡しと合わせて理解したい用語
ここでは、車上渡しと混同しやすい納品方法の種類や関連する用語を紹介します。
< 軒先渡し・軒下渡し、置き場渡し >
〈軒先渡し・軒下渡し〉
配送側のドライバーが荷受人の軒下(家の玄関や工場、倉庫の入り口)まで荷物や商品を持ってきて、荷受人に納品する方法です。車上渡しとの大きな違いは、荷物の引き渡し場所です。車上渡しがトラックの荷台で荷物を引き渡すのに対し、家の玄関や工場、倉庫の入り口で引き渡すため、ドライバーが運搬できる宅配便などの小型の荷物の場合に適用されることが多くなります。
〈置き場渡し〉
配送側のドライバーが荷受人の予め定めておいた場所までに荷物を運び置いていく方法です。ドライバーがその置き場に荷物を置いて行ってくれます。車上渡しは、トラックの荷台での荷物の引き渡しですが、置き場渡しは、荷受人の指定場所で 荷物の受け渡しを行うという点が異なります。置き配などはこの納品方法が多くなります。
< 車上受け、荷下ろし、積み込み、縦持ち、横持ち >
〈車上受け〉
トラック(車)の荷台の上で、お客様から荷物を受け取る、積み込みは荷送人が行います。
〈荷下ろし(荷降ろし)〉
物流では、トラックの荷台に積まれた荷物をおろすことをいい、積み下ろしとも呼ばれます。
物流での荷下ろし作業は、大きく分けると手作業で人が行う場合と、フォークリフトやクレーンなどの荷役機器を用いて行う場合があります。
また、「①下ろす」、「②降ろす」、「③卸す」と荷物の状態によって使い分けされることがあります。「①下ろす」は単純に荷物の上下移動を行う場合に用いられます。「②降ろす」は、乗り物(車、船舶、飛行機など)から荷物を移動させる場合に用いられます。但し、物流においては、①、②の使い分けが曖昧でどちらでも問題なく使用されています。「③卸す」は、問屋が商品を小売業者に売り渡すという意味合いがあります。
〈積み込み〉
荷物をトラックの荷台に積むことをいい、積み付けとも呼ばれます。また、積み方にも種類があり、手作業で人が行う「バラ積み」、パレットを用いてまとまった量の荷物を積み込む「パレット積み」、フォークリフトやクレーンなどの荷役機器を使用する場合があります。特に、荷物の積み込み、積み下ろしを全て手作業で行うことを「手積み手降ろし」といいます。ラストワンマイルの配送や小型の荷物を配送する場合は、この手法が主流です。
積み込みを行う場合、ただ荷物をトラックに積み込めばよいわけではなく、効率的にトラックの荷台を活用するためにコツがあります。荷物の重さ、大きさ、荷物量、配送の順番などを判断し、ドライバーはトラックに荷物を積み込んでいきます。
〈縦持ち〉
ビル等、複数階からなる建物内での荷物の移動のことで、特に上下階の移動を伴う荷物の運搬(1階から3階へ運搬する、2階から5階に運搬するなど)、フロア間で縦の移動させる運搬作業を指します。大型の荷物や、重量物で適用されることが多く、階段やエレベーターを使用した移動が一般的です。
〈横持ち〉
横持ちには、大きく分けて2つの意味があります。1つ目は、配達業務の効率化のために行われる、荷物の配送途中での横持ちです。社内物流などで自店の荷物を目的地に送る際、自店で配達はせず、他の拠点を経由して配達することを横持ち・横持ち配送と言います。
2つ目は、引っ越し作業先の環境のために行われる、トラックからの横持ちです。家と家の間隔が狭い住宅地、オフィスビル街などでは、引っ越し荷物の集荷先、配達先の周辺の道が狭いなど、周辺環境により大型トラックが侵入できないことがあります。引っ越し先の建物・お宅まで大きなトラックが行けないとき、荷物を2トントラックなどに積み替えてそこまで運搬することを言います。
縦持ちのように、単純に建物内での上下階の移動を伴うような荷物の運搬ではないことに注意しましょう。
縦持ち・横持ちについてはこちらの記事で詳しく紹介しています!
横持ち・横持ち配送とは-意味や費用の考え方、トラックからの横持ちなどシーン別に紹介!
車上渡しの具体例(段ボール、パレット、大型の荷物・重量物の納品)
具体的な車上渡しの納品シーンを紹介していきます。
〈段ボール(小型の荷物など)〉
段ボールのような小型の荷物ひとつひとつは、車上渡しで納品されることは少ないといえます。軒先渡し、軒下渡しでの納品が一般的です。
〈パレット〉
小型の荷物が複数口で納品される、ある程度まとまった量の荷物が納品される場合は、パレットが用いられます。パレットは企業間の輸送では最も一般的な荷姿といえます。パレットの車上渡しでは、フォークリフトトラックでの荷下ろしが行われます。荷受人は、トラックの荷台に乗っているパレットをフォークリフトトラックで下ろし、指定の場所まで運びます。
〈大型の荷物・重量物〉
フォークリフトトラックなどで荷下ろしが出来ない、大型の荷物・重量物は、クレーンなどを用いてトラックの荷台から下ろします。荷物を吊り上げることになりますので、より安全性の高い作業が求められます。
荷役作業・マテハンとは
最後に車上渡しと関連の深い、「荷役作業」、「マテハン」について解説します。
〈荷役作業とは〉
荷役作業は、「にやくさぎょう」と読みます。荷役作業は幅広く、荷物の輸送や保管が行える状態にするために行う関連作業、付帯作業全般を指します。
具体的には以下のような作業が荷役作業に該当します。
① 荷下ろし・積み下ろし
② 運搬
③ 積み付け
④ 入庫
⑤ 格納
⑥ 取り出し
⑦ 仕分け
⑧ ピッキング
⑨ 荷揃え
⑩ 出庫
特に車上渡しと深い関わりがあるのは、①荷下ろし・積み下ろし、②運搬、③積み付けでしょう。細かい荷役作業は、人力で行われることもありますが、ほぼ荷役機械を使用して作業します。
車上渡しで使用される荷役機械は、以下のようなものがあります。
種類 | 説明 |
---|---|
クレーン類 | 荷物の吊り上げ、吊り下げを行い、荷物の上下移動を行う。 天井クレーン、ジブクレーン、アンローダ、橋形クレーン、ケーブルクレーンなど。 |
運搬車両 | トラックの荷台への荷物の積み込み、積みおろしを行う。 フォークリフトトラックなど。 |
その他 | 荷物の移動を行う、コンベヤ類など。 |
車上渡しでは、荷受人が荷下ろしを行うため、このような荷役作業が必要になってきます。取り扱う荷物は、大型で重量があるものが比較的多いため、荷役機械を用いた安全な納品作業を行う必要があります。
荷役についてはこちらの記事で詳しく紹介しています!
荷役とは-読み方や意味、荷役作業の内容や機械をシーン別に紹介します
〈マテハンとは〉
マテハンは、マテリアルハンドリング【Material Handling】の略称です。具体的には、モノの移動や荷役作業、保管などの物流業務の効率化、機械を導入した省力化、自動化などが行われます。その取り組みや、仕組み、機械の総称を「マテハン」と呼んでいます。
つまり、マテハンは物流業務(輸送、保管、荷役、梱包・包装、流通加工、輸送情報)の全体の効率化を指すため、車上渡しの納品作業の効率化、省力化に繋がるといえます。マテハンも、マテハン機器という機械を用いて作業することが一般的です。上記の荷役機械もマテハン機器の一部といえます。
いくつかマテハン機器を紹介します。
種類 | 説明 |
---|---|
パレタイザ デパレタイザ |
パレットへの荷物の積み付けを行う機械のこと。ロボット式と機械式がある。 |
カゴ車 (カゴ台車) |
運搬の効率化を目的に使用されるスチール製または樹脂製の台車のこと。 カゴ台車、カーゴテナー、ロールボックスなどとも呼ばれている。 |
ソーター (自動仕分け機) |
仕分けの効率化を目的に使用される機械。コンベヤ上に載せられた品物を自動認識し、基準(大きさ、行き先など)に応じて、自動で仕分けを行う。 |
デジタルピッキングシステム | 摘み取り式のピッキング(倉庫内を作業員が回り、棚から必要な品物を取っていく方法)で使用されるシステム。 |
マテハン機器を使用することで、荷物の納品後の作業の効率化が可能です。車上渡しで受け取った荷物をどのように運搬し、保管するのか、マテハン機器を使用することでより効率的な作業を行うことが可能となります。
マテハンについてはこちらの記事で詳しく紹介しています!
マテハンとは|言葉の意味やメリット・注意点、マテハン機器について紹介
まとめ
今回は、トラック(車)の荷台(上で)、商品や荷物を納品する(渡す)方法である「車上渡し」をはじめとする納品方法とその関連用語について紹介しました。納品という言葉だけだと、定義が曖昧ですが、関連作業や種類を細かくみていくとより理解が深まるのではないでしょうか。ぜひ車上渡しなどの納品の知識の整理にこの記事を活用していただけたらと思います。