先入れ先出しとは-意味や方法、計算方法、レイアウトやアイデアについて紹介します!

卸売・小売業専門用語物流倉庫

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「先(に)入れ(たものを)先(に)出す」ことから、先入れ先出しと呼ばれている在庫管理法は、品質の維持、在庫の正確な管理など様々な面で非常に重要な意味・役割を持ちます。簡単なように思えますが、厳密で細かいチェック体制と仕組みが必要となります。今回は、先入れ先出しの意味や方法から、メリット・デメリット、アイデアやコツなどを紹介します。

先入れ先出しとは-意味や方法、計算方法、レイアウトやアイデアについて紹介します!

先入れ先出しの意味や方法を確認

在庫の評価方法や管理方法のひとつで、先に仕入れたもの(入荷したもの)を先に出荷する方法のことです。「先(に)入れ(たものを)先(に)出す」ことから、先入れ先出しと呼ばれています。英語では、【FIFO(First-In First-Out)】と表されます。

先入れ先出しは大きく2つの意味を持ち、使用するシーンによってそれぞれ意味が異なります。

〈① 在庫管理、在庫の評価方法としての意味〉

主に製品や商品を保管管理する物流センターや倉庫、コンビニエンスストアやスーパーなどの店舗にて使われています。「先に入荷したものから先に出荷する」方法を指し、特に賞味期限や使用期限などが設定されている場合にこの先入れ先出しが重要になってきます。

〈② プログラムでのデータ処理方式としての意味〉

主にプログラムでのデータ処理にて使われており、格納されたデータを格納された順番で処理する方式を指します。

一般的に用いられるのは、①在庫管理、在庫の評価方法としての意味だと思われますが、データ処理でも用いられることがあることを知っておくと役立つでしょう。

なぜ先入れ先出しをするのか、徹底する必要があるのか

なぜ先入れ先出しをするのか、徹底する必要があるのか

〈消費者の傾向と商習慣〉

先入れ先出しの考え方は、商品の「賞味期限・使用期限」と非常に深く関わっています。
例えば、スーパーで食品を購入する際、消費者はどのような行動を起こしているでしょうか。陳列されている商品の中から、購入する商品を選ぶとき、消費者は賞味期限が先のもの(製造日が最近のもの)を選ぶ傾向にあります。
この消費者の傾向によって、定期的に商品が入荷される小売店では、賞味期限が間近な商品を嫌厭することが多くなります。つまり、物流センターがそのような商品を出荷すると、小売店は入荷(購入・仕入れ)を嫌がるようになるのです。小売店はせっかく仕入れた商品を、結果的に売れ残りを恐れるために価格を引き下げて売らざるを得ず、最終的には収益を圧迫することになります。
また、小売店での作業面でもムダな手間が生じてしまいます。小売店では日付を考慮して商品をバックヤードに保管し、不足してきたら店舗に陳列しています。急に賞味期限が間近な商品を入荷させてしまうことで、小売店の商品管理作業を複雑にさせ混乱が生じてしまうのです。

〈品質を保つ・維持させる〉

商品は長期間保管し続ける事で、品質が悪化します。特に生鮮食品や食品は鮮度が落ちるのが早く、日用品や雑貨などの常温保存できるものも次第に品質が劣化していきます。劣化した商品は、消費者に販売することができず、在庫の廃棄処分の対象となります。このように、品質の劣化は、販売機会の損失や費用(保管や処理)の無駄に繋がります。その為、この劣化を最小限に抑える必要があり、その手段として先入れ先出しの徹底は、品質維持のために非常に重要となります。

〈在庫数を正しく管理する〉

上記の2点が大きな理由ですが、先入れ先出しは在庫管理の徹底、在庫数の管理にも大きな効果が見込めます。先入れ先出しを行う際、現在保管している在庫数や、保管期限など、在庫管理の重要な指標を都度確認することになります。その為、こまめな置き場整理や在庫数の把握の頻度が高くなり、棚卸しや入出荷の業務の正確性や効率化を図ることが可能です。

先入れ先出しのメリット・デメリット

〈メリット〉

・商品品質の維持、商品の期限切れ防止
・在庫管理の簡素化、倉庫内の保管場所や棚の整理整頓が可能
・出荷までの時間が短縮できる(リードタイムの短縮)

〈デメリット〉

・データ管理の煩雑化(製造日、賞味期限、使用期限の管理の追加)
・作業の工数の増加、保管スペースの確保の必要性

先入れ先出し法の計算方法

ここでは、物流センターを例に挙げ、先入れ先出し法の計算方法等を説明します。

先入れ先出し法の計算方法

先入れ先出しは、入荷作業から始まります。商品を乗せたトラックが物流センターに到着し、ドライバーは入荷予定の商品の入荷受付を行い、ドライバーが持つ納品明細書を確認します。その後トラックを指定の入荷バースに接車し、ドライバーが積み降ろしを行い、完了すると物流センターの作業員とドライバーで入荷商品の過不足や品目違いが無いかを確認します。最後に物流センター側に受領印をもらうという流れです。
物流センターの作業員とドライバーで商品の状態や個数、品質など確認をしあう作業を検品といいます。検品では、事前に入庫データを取り込んだハンディターミナルなどで、商品の物流ラベルやバーコードを読み込み、データと入荷した商品を照合します。その際に、製造日、賞味期限などのロット管理や商品のトレーサビリティのチェックなども行われます。

〈製造日や賞味期限の確認方法〉

製造日や賞味期限の確認方法

入荷時の外箱のラベルやITFコードには賞味期限の情報は入っていないため、物流センターでは入荷時に商品の外箱に印字されている賞味期限の情報をハンディターミナルで入力し、その情報をマスターと照合します。

※ITFコードとは...企業間の取引単位である集合包装(ケース、パレットなど)に対し、設定された商品識別コードのことです。14桁と16桁があります。

〈入荷許容制限による出荷日のコントロール〉

入荷許容制限による出荷日のコントロール

入荷許容制限とは、その商品に応じて、受け取り側の小売店が入荷を認めるか認めないかの許容日数のことを指します。食品小売業界では、製造日から賞味期限まで3分の2の期間が残っている必要があるという暗黙のルールというものが存在しています。(ちなみに、販売許容制限は製造日から賞味期限まで3分の1の期間が残っていることを指します。)
それを考慮して、物流センターでは、商品の製造日と消費期限を基に入荷許容制限と出荷許容制限を定めています。例えば、入荷許容制限を超えての入荷の場合は、ハンディターミナルでストップがかかるなどの仕組みを利用しています。これらの基準を設け鮮度管理を行うことで、小売店でスムーズに商品を受け取り販売ができるように事前にコントロールを行っているのです。

置き方のアイデアやコツ

先入れ先出しの方法を確認しながら、効率的に行うコツを紹介していきます。

〈先入れ先出しの流れ〉

① 入荷後、入荷した商品の情報を記録(在庫管理表や在庫管理データ)し、ラベリングを行う。
② ロケーション管理は固定ロケーションの方が管理しやすい。定位置に商品を置く。
③ 先に保管されている商品を手前に配置し、入荷した商品を奥側に配置する。
④ 出荷など、商品を取り出す際は手前側から取り出す。

先入れ先出しを行う際は、配置の定位置化と入荷した商品は奥側に配置し、出荷する商品は手前側から出荷するという作業ルールの徹底が重要となります。

〈先入れ先出しを効率的に行うためのコツ〉

先入れ先出しを効率的に行うためのコツ

・レイアウトを工夫する

倉庫のレイアウトについては、固定ロケーションの方が管理しやすいといえます。また、I字型、L字型、U字型などのレイアウトから合う配置を選択します。置き場は広めにとる方が古い在庫を動かしやすく、作業性が高まります。

・置き方や入れ方を変える

棚などに保管する場合は、投入口と搬出口を分けて保管できる「ローラースルーラック」を活用すると効率が上がります。他にも商品を手前に揃えて置く「前進立体陳列」などを行うと、後から入荷された商品の保管がしやすくなります。

・表示を分かりやすくする

先入れ先出しでは、商品のそれぞれに入荷時期やロットがわかるようラベルを貼ります。箱などには、すでに製造日やロット番号などの情報が記載されていますが、作業の度に都度確認するのは効率的とは言えません。例えば、月ごとに分けてラベリング、色ごとにシールなどで判別できるようにすると一目で確認ができるようになります。また区画を細かく分け、あえて保管する在庫数を減らし、在庫自体の管理をしやすくすることも効果的です。

スーパーやコンビニエンスストア、製造業などシーンによる先入れ先出し

スーパーやコンビニエンスストア、製造業などシーンによる先入れ先出し

〈スーパー・コンビニエンスストアの先入れ先出し〉

スーパーやコンビニエンスストアでは、商品の陳列時に先入れ先出しを行います。商品の陳列後も定期的に鮮度管理を行うため、作業性を高める工夫が行われています。例えば、鮮度管理の頻度で陳列場所を決めています。また、棚自体もスライドできる形となっており、奥の商品があったとしても、陳列ができるようになっています。さらに、前面の商品の顔(フェイス)を整える「フェイスアップ」や、商品棚の手前側の商品が売れた後に奥にある商品を手前側に出す「前出し」をこまめに行うことで、古い商品から売れる形を取り、新しい商品の陳列スペースも同時に確保するようにしています。さらにスーパーやコンビニエンスストアでは、倉庫では行わない、賞味期限切れ管理のチェックや品引き(返品・廃棄)を行う必要があるため、先入れ先出しを仕組み化し、徹底することは大変重要なことです。

〈製造業での先入れ先出し〉

製造業では、原材料や部品などの在庫管理に先入れ先出しを行います。使用期限は比較的長いものが多いですが、医療品やケミカル用品、半導体や電子部品などを取扱う事業では特に重要視されています。
また長期保管、滞留時間を最小限に抑えることで、品質の劣化が少ない状態で使用することができる、こまめな管理により正確な在庫管理を行うことができるメリットなどから注目を集めています。

WMSと先入れ先出し

WMS(ダブリューエムエス)は、【Warehouse Management System】の頭文字をとったもので、倉庫管理システム(物流センター管理システム)のことを指します。WMSは、物流センターの業務を効率的に管理する総合物流システムで、入荷から出荷までの各工程の情報を一元化したデータベースから、最適化された様々な指示を作業者に送っています。
先入れ先出しの場合も、入荷日、製造日、出荷制限などの情報を基に、入荷管理、在庫管理、出荷管理など様々な場面でWMSを活用することができます。先入れ先出しを行うと管理する項目が増えることがデメリットですが、WMSと連携することで、管理の手間を削減することも出来ます。

WMSについてはこちらの記事で詳しく紹介しています!
WMSとは|TMSとの違いや物流システム導入のメリットと留意点について

まとめ

食品業界などで当たり前に行われている先入れ先出しですが、意味や目的を知ると、とても重要な作業だということがわかるでしょう。商品の品質を維持し、廃棄ロスをなくすことは、環境負荷の面でも注目が集まっています。先入れ先出しを理解が、最適な在庫管理の一助になると嬉しいです。