荷待ち時間が物流業界に与える影響とは?政府の取り組みや発生原因、改善方法を解説

システム専門用語課題・改善

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近年、ECサイトの需要が高まったことにより、物流業界では荷待ち時間が課題視されています。労働人口も減少傾向にある中、荷待ち時間によるスタッフへの悪影響は最大限に抑えたいところでしょう。本記事では、荷待ち時間が物流業界に与える影響、政府の取り組み、発生原因、改善方法をご紹介します。

物流業界における荷待ち時間とは

物流業界における荷待ち時間とは、トラックドライバーが荷物の積み下ろしを行う際に、荷主(荷物の持ち主や送り主)や物流施設の都合によって待機している時間のことです。ここでは、荷待ち時間によって物流業界に発生する課題と政府の取り組みなどについて解説します。

荷待ち時間によって物流業界に発生する課題

荷待ち時間には、荷物の積み下ろし待ちや指示待ちの時間も含まれており、ドライバー側ではコントロールできないため、労働時間としてカウントされます。2024年4月1日からは、トラック運転手の拘束時間の上限が厳しくなることに伴い、荷待ち・荷役時間の短縮が必要です。運転手の年間時間外労働時間が960時間に制限されるため、荷待ち時間を含む拘束時間の短縮が求められています。

したがって荷待ち時間の短縮は、物流の効率化と運転手の労働環境改善の両方に寄与する重要な課題です。国土交通省の調査によると、荷待ち時間は全運行の約24%で発生し、平均して1時間34分に及ぶことが明らかになっています。

参考:経済産業省/「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」を策定しました

荷待ち時間の課題に対する政府の取り組み

政府は、荷待ち・荷役時間の削減を目的とした「物流革新に向けた政策パッケージ」を策定し、大手企業を中心に業界・分野別の自主行動計画を作成し、2023年度中に取り組むことを求めています。運送事業者、発荷主、着荷主の連携・協働が必要とされており、荷待ち・荷役時間の合計を2時間以内に抑えることが目標です。

荷待ち時間記録の義務化について

荷待ち時間記録の義務化とは、トラックドライバーの長時間労働を改善し、輸送の安全を確保するために国土交通省が行った措置です。具体的には、貨物自動車運送事業輸送安全規則の一部を改正し、荷主の都合による荷待ち時間が30分以上発生した場合に、その記録が義務化されました。

本改正は、荷待ち時間を生じさせている荷主への勧告や是正指導を行うための確認の一助として、また過労運転の防止にもつながるため導入されました。記録には、以下の情報が含まれます。

  • 集荷地点等への到着日時と出発日時
  • 荷積み及び荷卸しの開始と終了日時
  • 荷待ち時間の開始と終了

これらの記録は、運送事業者が1年間保存する必要があり、車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上のトラックに乗務するドライバーに適用されます。荷待ち時間記録の義務化により、荷主と運送事業者が協力して荷待ち時間の削減や荷役作業の効率化を図ることが期待されている状況です。

また、荷待ち時間の記録はデジタルタコグラフ(デジタコ)などの技術を用いて行えるため、記録の正確性が向上し、運送会社やドライバーに過度な要求をしている荷主に対する政府の勧告や是正指導が可能になります。したがって、労働環境の改善につながる重要なステップといえるでしょう。

荷待ち時間の記録義務化は、ドライバーの健康と安全を守り、運送業界全体の労働環境を改善するための重要な法的措置です。このような取り組みにより、過労死や過労自殺の防止、居眠り運転による交通事故の減少など、多くのポジティブな効果が期待されています

荷待ち時間が発生する4つの原因

そもそも荷待ち時間は、なぜ発生するのでしょうか。ここでは、荷待ち時間が発生する原因を4つご紹介します。

原因1.出荷体制の不備

出荷体制に不備がある場合、荷物の準備や整理が適切に行われていないため、トラックが到着しても、すぐに荷積みや荷卸しを行えない状況が発生する可能性は高いです。例えば、荷物のピッキングリストが不正確であったり、荷物が散乱していたりすることが原因で、ドライバーや荷役作業員が荷物を探す時間が増え、結果として全体の作業効率が低下します。

原因2.受付や指定時間の集中

特定の時間帯に受付や荷物の指定時間が集中すると、多数のトラックが同時に到着し、物流施設の処理能力を超えることがあります。多くの企業が業務開始時や終業前に荷物の受け渡しを行う傾向があるため、ピークタイムにはトラックの待機列ができ、荷待ち時間が長くなる原因となります。

原因3.倉庫オペレーションの問題

倉庫内の作業効率が悪い、または作業プロセスに問題がある場合、荷物の積み下ろしに時間がかかる可能性が高いです。例えば、倉庫内のレイアウトが最適でない、作業員のスキルが不足している、または作業手順が複雑で時間がかかるなどが原因で、荷物の移動や整理に余計な時間が必要となり、荷待ち時間の増加につながります。

原因4.ITシステムの導入や活用不足

効率的なスケジューリングや情報管理を行うためのITシステムが不足している場合、荷待ち時間が長くなる可能性があります。適切なITシステムが導入されていれば、荷物の追跡や在庫管理、配送スケジュールの最適化などが可能となり、全体の物流効率を向上させることが可能です。しかし、これらのシステムが不足していると、情報の不透明性や誤ったスケジューリングにより、荷待ち時間が不必要に延びることになります。

荷待ち時間を改善する方法

荷待ち時間を改善するためには、以下のような方法が考えられます。

  • ITツールの活用
  • バース予約システムの導入
  • 荷主・受け主間の連携強化
  • 出荷体制の改善
  • 受付や指定時間の分散

それぞれの内容について、以下で解説します。

ITツールの活用

荷待ち時間の実態把握には、時間管理用のツールやアプリ、位置情報を把握できる物流トラッキングシステムが有効です。これらを活用することで、到着時刻の予測や最適な経路を導き出し、物流の効率化を実現しやすくなります。

バース予約システムの導入

荷物の積み下ろしを行うバースを予約制にすることで、荷待ち時間の削減が可能です。荷主側はトラックの出入り予定を可視化でき、作業の優先順位をつけやすくなります。

荷主・受け主間の連携強化

物流の効率化は、荷主の理解と協力が不可欠です。適切な人員配置や各種ツールへの投資により、スムーズな荷物の積み下ろしを目指した改善を行うことが重要だといえるでしょう。

出荷体制の改善

荷物の準備や整理が適切に行われていないことも、荷待ち時間の原因の1つです。マニュアルの改善やレイアウトの見直し、機材・設備の導入などにより、出荷体制を改善することが求められます。

受付や指定時間の分散

受付や指定時間が集中することを避けるために、トラック予約受付システムを導入することも有効です。トラックの到着時間を事前に予測し、荷物の積み下ろしの準備を効率的に実施できるようになります。

まとめ

荷待ち時間は物流業界において重要な課題であり、ドライバーの労働時間としてカウントされるため、効率化が必要です。政府は荷待ち時間の削減を目指し、記録義務化や自主行動計画の策定を進めています。

荷待ち時間の原因には出荷体制の不備や受付時間の集中などがあり、ITツールの活用やバース予約システムの導入、荷主との連携強化などにより改善が可能です。これらの取り組みにより、労働環境の改善と物流の効率化が期待できるでしょう。本記事の内容を参考に、荷待ち時間によるトラブルの発生を抑制していただければ何よりです。

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