RORO船|今RORO船が注目されているその理由とは
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現代の物流業界において、海上輸送の効率化は重要な課題の一つです。特に、貨物の積み降ろしにかかる時間やコストを削減し、安全かつ迅速な輸送を実現するために「RORO船(ロールオン・ロールオフ船)」が活躍しています。この記事ではRORO船の概要やメリット・デメリットを説明した上で、今RORO船が注目されている理由を解説します。
RORO船とは
RORO船とは
RORO船とは、貨物を積んだトラックやトレーラーなどの車両が船に自走して乗り込み、そのまま貨物を運搬できる貨物専用船舶のことです。「Roll on/Roll off」の頭文字をとった略称で、「Roll on」はトラックの乗り込み、「Roll off」がトラックの下船を意味しています。
船には車両が乗り降りするためのランプウェイがあり、発地では貨物を積んだトラックやトレーラーがそのまま乗り込み、貨物を積んだ台車部分のシャーシだけを切り離して船側に載せ、トレーラーヘッドだけが下船します。着地ではトレーラーヘッドだけが乗船してシャーシを連結し、そのまま下船します。
RORO船の対義語としてLOLO船があります。こちらは「Lift on/Lift off」の略称で、港の岸壁に設置されているクレーンやリフトを用いて貨物の積み下ろしをする船舶のことを指します。
内航RORO船の現状
国土交通省海事局は、物流革新に向けた政策パッケージで「トラック長距離輸送から鉄道や船舶へのモーダルシフトを強力に促進し、最適なモードを活用したモーダルコンビネーションの展開を図るために、~(中略)~フェリーの積載率についての定期的な調査・荷主企業等への情報提供を行い、利用可能な輸送力について周知することにより、鉄道や船舶の利用促進及び積載率の向上を図る」と示されたことを受け、中・長距離フェリーとRORO船のトラック輸送に係る積載率の動向を調査し、その結果を2023年8月から4か月ごとに公表しています。
直近のアンケート結果を見ると、航路によっては積載率に余裕の見られるものもあります。
(国土交通省 積載率の動向についてを参考に作成)
フェリーとの違い
基本的に大型トラックやトレーラーなどを運搬している点はフェリーとRORO船は同じです。しかし、フェリーは大型の貨物に加え多数の旅客も輸送している点がRORO船とは大きく異なります。
フェリーを利用することで、乗船中はドライバーが船内で休憩できるため休息時間確保につながります。また、ドライバーが乗船せずにトレーラーシャーシだけの無人輸送する場合もドライバーの移動距離・労働時間を短縮することができます。
RORO船のメリット
RORO船を利用した場合にはどのようなメリットが得られるのでしょうか。
荷役時間の短縮とコスト削減
RORO船は、貨物をクレーンで吊り上げる必要がないため、荷役時間が大幅に短縮されます。例えば、自動車輸送では、船内のデッキへ車両をそのまま走行させることができるため、積み降ろし作業がスムーズに行えます。
ドライバーの拘束時間削減
先ほどRORO船とフェリーとの違いでも述べましたが、海上輸送では乗船中はドライバーの休息期間として労務処理が可能ですので、自走するトラックの陸上輸送よりもドライバーの拘束時間削減ができます。海上輸送は2024年問題の対策や改善基準告示の遵守に有効です。
長距離輸送においてはRORO船を利用した方が、すべてトラックのみの輸送よりも物流労働生産性が高くなるとされています。
貨物の安全性向上
コンテナ輸送の場合、貨物の積み下ろし中に落下や衝撃による損傷リスクが伴いますが、RORO船ではその心配が少なくなります。特に、高価な自動車や精密機械の輸送において、貨物の安全性が確保されることは大きなメリットです。コンテナでは輸送が難しい貨物にも対応できます。
環境に優しい
船舶はトラックなどの営業用貨物車に比べて、CO2排出量が5分の1だと言われています。海上輸送で陸上輸送に代わって大量の荷物を輸送することで、CO2排出量を減らし環境負荷の低減に貢献できます。
緊急時の輸送手段
RORO船は災害などの緊急時で高速道路・鉄道・航空が使用できないときに、緊急輸送手段として利用でき、国内物流を維持するうえで極めて重要な役割を果たしています。
RORO船のデメリット
メリットの多いRORO船ですが、デメリットもあります。ここでは、デメリットも見ていきましょう。
時間がかかる
船の速度は、通常20~30ノット(約37~56km/h)であり、飛行機や鉄道などと比べて遅いことがデメリットです。緊急性の高い商品や新鮮な食材などの輸送には適していません。
また、港についてからは陸上輸送となるので、陸上輸送のみの場合と比べるとどうしてもリードタイムが伸びる可能性があります。
天候の影響を受ける場合がある
台風や高波などの海で発生する自然災害の影響をどうしても避けられない場合があります。これによって港への出入港が制限される、港への到着が遅れるなどの影響が出る可能性は海上輸送を利用する場合に想定しておかなければなりません。
貨物が船内に固定されているものの、荒天時の揺れによるダメージリスクもあります。特に、台風や高波の影響を受ける航路では、貨物の安全対策が重要になります。
積載効率が低下する
RORO船は、貨物を自走式またはトレーラーで運ぶため、コンテナ船に比べて空間効率が劣るという課題があります。特に、デッキ間の高さやランプウェイ(スロープ)の配置によっては、積載可能な貨物の種類や量に制限が生じます。また、トラックやトレーラーは海上では自走しないため、車両としての稼働率も低くなります。
寄港地の制限
RORO船はランプウェイを必要とするため、すべての港に寄港できるわけではありません。コンテナ船に比べると、寄港できる港湾インフラが限られるため、新規航路の開拓にはコストがかかります。
モーダルシフトは環境に優しい輸送方法
RORO船はモーダルシフトの選択肢の一つです。先ほどメリットの1つとしてあげましたが、
CO2排出量削減による、環境に優しい輸送
1トンの貨物を1km運ぶ(=1トンキロ)ときに排出されるCO2の量をみると、トラック(営業用貨物車)が208gであるのに対し、鉄道は20g(約1/10)、船舶は43g(約1/5)しかありません。つまり、貨物輸送の方法を転換することで、鉄道利用では約90%、船舶利用なら約80%もCO2排出量を削減することができるのです。こうしたことから、地球温暖化対策としてモーダルシフトは大変有効です。
(参照:モーダルシフトとは|国土交通省)
先で述べたように、日本として、温室効果ガスの削減を明言している中で、輸送におけるCO2排出量を大幅に削減できることがモーダルシフトの最大のメリットです。
大量輸送、輸送の効率化によるドライバー不足の解消
厚生労働省発表の 職業安定業務統計によるとトラック運転手の有効求人倍率は全職業平均よりも高くなっており、トラック運転手の不足は深刻な問題です。現在、トラック運転手に従事している方の平均年齢は大型トラック・中型トラックともに全産業と比較して高く、また年々平均年齢は上がる傾向が見受けられます。
このような状況下の中、働き方改革の一環として、2024年4月から自動車運転業務にも労働時間の上限規制が施行されました。
(2024年問題についてのコラムはこちら)
それに伴って労働力不足が懸念されていますが、モーダルシフトの「大量輸送」は大量の貨物を少ない人員で一度に運ぶことを可能としています。その結果として輸送効率を高める事に繋がります。
まとめ
RORO船は、特に自動車や大型貨物輸送において、迅速かつ安全な輸送手段として重要な役割を果たしています。荷役時間の短縮や貨物の安全性向上といったメリットがある一方で、積載効率や寄港地の制限といった課題も存在します。しかし、環境対応型RORO船の導入やデジタル技術の活用により、今後さらなる効率化が期待されます。
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ボックス単位の輸送により、適切なコストでの貸切サービスを実現します。少ない荷量の際は、トラック1台をチャーターする必要がなく、また、過剰な梱包も不要なので、環境に優しい点もポイントです。
ぜひ、JITBOXチャーター便・JITパレットチャーター便の利用をご検討ください。